極私的偏愛映画㉓『トロン・レガシー(2010)』3D映画ブームの最中に生まれた傑作。ダフトパンクの音楽に思わずタテノリ
はい、今回はね『トロン:レガシー(2010)』をやってこうと思います。
なんでこのタイミングかってのは後述。 ではやっていきましょう
ちょっと前になりますが、こんなニュースが世界を駆け巡りました。
「ダダダダ、ダフトパンク解散~~~!!?? マジ~~!!??」
というかダフトパンクに”解散”っていう概念があったんだ…という思いと同時に、
結成から今回の解散に至るまで、それなりに追ってきた天才ユニットの突然の解散宣言にまず思ったのは「そういえばダフトがサントラを手掛けた映画があったよな…」の念。
で、脳直ですかさずこんなツイートをしたところ、
ダフトパンク解散とのことですが、
— (ボディが)ガラ空き (@Shin_Tayo) 2021年2月22日
2010年公開の『トロン:レガシー』は鳴かず飛ばず、みたいな印象が強いですがダフトパンクの冴えてるサントラとギラギラのビジュアルだけでも十分満足できる名作だと思うんですよね。 pic.twitter.com/qjSo07Mdin
これがまぁ、近年の自分のTLではそれなりにバズりまして、今回改めて『トロン:レガシー』について記事でも書いてみるかな、と相成りましたってワケ(?)
別名『トロン2』とも呼ばれる今作は、1982年に公開されたオリジナル版の正式な続編。世界で初めて全面的にコンピューターグラフィックスを用いて制作された作品とされていて、有名な工業デザイナーのシド・ミードが参加していたり、アニメーションではティムバートンがクレジットされていたりと、かなりエポックな作品。
前作で主人公のケヴィンを演じたジェフブリッジスやタイトルロールのトロンを演じたブルースボックスライトナーなど、一部キャストは続投され、2010年にはテストフッテージと題されたパイロットフィルムが公開された。
この時点で、かなり実際の本編に近いルックを確立させているのだが、
個人的には『仮面ライダーファイズじゃん…』と、オリジナル版→ファイズ→レガシーという継承が見えて、特撮オタ的にもビンビンくるものがあった。
なにせ10年前の記憶なのでかなりあいまいな部分があるけど、『アバター(2009)』の翌年の公開作ということもあって、当時の3Dブームに乗っかった宣伝のされ方を良くされていたような気もする。
当時の3Dメガネは現在のプラスチック製のものではなくて、すこし重量のあるもっと機械的なものだったと思うんだけどメガネONメガネだったので結構疲れた。
いずれにしても「3D映画前提」の作られ方をされているので映像面においては、とくに”奥行き”を強く意識した画作りやすぐ目の前で出来事が単会される演出、スローモーションの多用が強く印象に残っている。
本作で初めてメガホンを取ったのは、ナイキやアップルなどのCMで未来的なビジュアルセンスを披露した映像作家ジョセフ・コシンスキー。
舞台挨拶では、「『トロン』が当時9歳だった自分に衝撃を与えたのと同じように、最先端のビジュアル表現でいまの観客を魅了したい」と抱負を語っていたそう。
氏の手掛けたショートフィルムやCMは下記のURLから観ることができる。
他にも『オブリビオン』など、未来的ビジュアルの作品を任されることの多いコシンスキーだけど、まぁマテリアルの撮り方が上手い。
特にインダストリ系の工業製品、プラスティックの光沢感の見せ方は流石コマーシャルの世界で数多のクライアントの要望に応えてきたなという安定感がある。
今見ると、ジェフ・ブリッジスの若返りCGはちょっとアレなところもあるけど、
レトロフューチャー的なビジュアルと音楽は健在。10年経っても見飽きない、カルト的な傑作になりました。
ダフトパンクは今作のオリジナルスコアを手掛けているほか、
中盤、”謎のDJ”としても出演。
主題歌である『Darezzed』を含む、全31曲(うち9曲はこれまでボーナストラック扱いであったものをストリーミング用として2020年12月に追加収録したもの)を今作のオリジナルスコアとして提供した。
今作の主人公であるサムに「広大なバーチャルワールドに入った」と語るケヴィンのモノローグからタイトルロールとして使用されている「The Grid」や、
父親が疾走しやさぐれてしまったサムが夜の街をバイクで疾走する際に流れている「The Son of Flynn」、バーチャル空間に取り込まれてしまい、プログラムにデジらるアーマーを着用される際の「Armory」プログラム同士を競い合わせ、見世物にしているという広大で退廃的なデジタルワールドを象徴するかのような「Arena」、
冒頭でサムがバイクを得意とする伏線を回収したライトサイクルによるチームマッチで流れている「The Game Has Changed」などなど…
ほぼ全編にわたり名曲のオンパレードと言う状態なものだから、このダフトパンクによるスコアを大音響で味わいたくて映画館に複数回足を運んだ、という人も少なくないと思う。(自分がまさにそう)
個人的に上記以外でお気に入りなのは、シーン的な盛り上がりと合わせたライトジェット戦で流れる「C.L.U.」なんだけど、いわゆる本編Verが収録されていないのが残念。
(リンズラーに話しかけるケヴィンの時は若干音楽が変わる)
今作の難点として、「ストーリーが…」という声がいくつか上がっていたのですが、
ストーリーがビジュアルの添え物になってしまっているか、というと何とも言えないところで、前作がそれなりに綺麗な着地を見せた分、正当な続編で「あのキャラがこうなって…」という批判はやむを得ないと思うのですが、いわゆる創造主であるケヴィンと作り出されたプログラムであるクルーの反乱と確執というテーマはアシモフ的だなぁと思いつつ、二人が同じ姿をした鑑写しの存在であり、クルーもかつては善良なプログラムとして機能していたことを考えると、旧約聖書『創世記』3:1-15だったり『ヨブ記』1:6-12、2:1-7での”サタン”的なモチーフに由来があるのか云々考えだすとキリがない。
「神=ケビン」「キリスト=サム」「聖霊=クオラ」と考えると、色々符合する部分もあるが、とにかく日本人には馴染みのない話だし、
映像のノイズになっていないのならそれでいいじゃないか。と個人的には思う。
個人的には背中に付けているディスクがやたら強調されるので、
ディスク=輪になぞらえて、「時間は世界と生命の根源である」として、円環=無限の周期(サイクル)と捉えたマヤ文明やニーチェの永劫回帰(経験が一回限り繰り返されるという世界観ではなく、超人的な意思によってある瞬間とまったく同じ瞬間を次々に、永劫的に繰り返すことを確立するという思想)なんかにモチーフがあると、グッとくるんだが。まぁどうでもいい妄想。
ともあれ、2020年にリブート化が報じられた『トロン』だったが、
ダフトパンクが解散してしまった今、音楽はどうするのだろう。同じくユーロ出身のテクノユニットと言うとほぼ飽和状態にあるので、ダフトに匹敵するユニットを探せるのだろうか。今はまだわからない。
どうでもいい話だが、映画公開当時に出回ったオモチャで、
顔の液晶に役者の顔が「ボヤ~~ッ」と不気味に浮かび上がるフィギュアが売られていた。秀逸すぎて一通り買いそろえた気がするのだけれど、いったいどこへ行ったのか…