タイトル”だけ”異様にカッコいい映画『フル・ブラスター』鑑賞記

どうもガラ空きです。

2022年明けましておめでとうございます!

 

唐突ですが映画レビューします。

 

Amazonがオススメしてくる映画商品一覧を眺めていたら

モビルスーツの追加武装みたいな映画おる…

と思い気になってつい格安の300円で即購入した得体の知れない珍映画、

 

その名も『フル・ブラスター』

 

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この映画、調べてみたら監督がマーク・L・レスターだったのが驚いた。

(代表作『コマンドー』『炎の少女チャーリー』『リトルトーキョー殺人課』など)

マーク・L・レスター - Wikipedia

 

80年代アクション映画の中でも特に知能指数の低い作品群で脳細胞から楽しませてくれる職人監督のフィルモグラフィーに"凡作は在れど駄作はないだろう"と期待と不安に胸を躍らせつつ、

 

いざ鑑賞。

 

 

ある穏やかな休日、キャンプを楽しむためにキャンプカーで山奥を訪れていた現役警察官チックと楽しい仲間(ジェイ、アリーン、エヴァ、タグ)たち。お手製のマルガリータですっかりゴキゲンのご様子。

 

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うわっ!!!

役者やってた頃のテイラー・シェリダンだ!!!

 

顔変わってねぇ!!(ていうかなんだこの字幕)

テイラー・シェリダン - Wikipedia

 

 

一方そのころ、場所を同じくしてとあるメキシコ系カルテルと麻薬ディーラーによる白昼堂々最高のお散歩日和の中、うす暗い闇取引が行われていた。

 

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関係ないけど、

けっこう頻繁に画面のアスペクト比が変わるのでストレスが溜まる

 

 

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ディーラー側の仲間の一人が持ち込まれたコカインに対して「麻薬の量が1割足りてねぇ」とか、測り売りでイチャモンをつけてくる年配客みたいな事を言い始めて現場はだんだんと不穏な空気に…

 

そうこうしているうちに取引はあっという間に一触即発の状態。

張り詰めた状況を断ち切るように先ほどの「足りねぇ!」兄ちゃんが無秩序に銃を撃ち始めると同時に、全員が持っていた銃を四方八方に乱射し始め、

 

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チーーーーーン…

 

無 事 壊 滅。

即オチ2コマ漫画みたいだ。

 

職業柄か、いち早く銃声に気づいた現職警官のチックは仲間の制止も聞かずに足早に現場に駆け付ける。

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※この時点で観客はまだ”フル・ブラスター”の意味が何なのか分かっていません。

 

一方そのころ、一命を取り留めた麻薬ディーラーの中でも割と”良い人”っぽい雰囲気を醸し出していたブライアンは肩に傷を負うものの、良い人パワーでなんとかその場を離脱。

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入れ違いで銃声を聞きつけたチックは血の海となった現場でバッグいっぱいのドラッグ札束で満杯になったアタッシュケースを発見する。

 

まだ息のあるディーラーに対して銃を捨てるよう促すが、抵抗できないと悟った時点でディーラーの脳天に銃弾をぶち込み、ドラッグとケースを抱えてその場から立ち去ってしまうチック。これを偶然にも木陰から目撃していたブライアン、

思わず「/(^o^)\ナンテコッタイ」と一言。

 

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そりゃそうだ。

 

仲間のところに戻ったチックだったが、

 

「銃撃戦があった。死体だらけだ。だが偶然にも、

大量とドラッグと金をGETしたので早いところずらかろう。OK?」

 

と、どう考えても気が触れたとしか思えない提案に、当然ながら仲間の一人であるエヴァから猛反発を喰らう。すかさず「バラしたらお前の弟の罪状を晒して、青春を刑務所で過ごさせてやる」と脅すチック。

 

マジでサイテーだよお前……(ドン引き)

 

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過去に麻薬に溺れた経験のあるエヴァは

 

計画は黙っててあげるけど加担するのはイヤ!」とグループを離脱してしまう。

 

※この時点も観客はまだ”フル・ブラスター”の意味が何なのか分かっていません。

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<<あ!野生のブライアンがあらわれたぞ>>

 

フラフラと森をさまよっていたところで傷を負ったブライアンと遭遇。

エヴァを銃で脅しながらも「傷を治療できるところに連れていけ」と告げる。

 

盗んだ金を前にして

「自分の金はいつ増やす?今でしょ!」と東進スクールの講師みたいな事をのたまうタグ(シェリダン)くん。

 

結局、満場一致でパクったドラッグと金をみんなで山分けることになり、

すっかり有頂天の悪友(バカ)たち。

 

 

また一方、現場の惨状を知ったカルテルのボスは、逃げ出したブライアンが事の真相を知っているはずと踏んで、1人の始末屋を差し向ける……

 

※この時点でも観客はまだ”フル・ブラスター”の意味が何なのか分かっていません。

 

 

んで、こちらが林家パー子みたいなRGB値のきついドピンクのドレスを纏って馳せ参上した、激マブ始末屋のセランジさん。

 



……というのが今作の大まかなあらすじ。

 

ここまで観た感じだと、

完全に話の運び方がコーエン兄弟の『ノーカントリー(2007)』なんだけど、

これって偶然……?

 

 

いいや、違うね。

 

 

コーエン兄弟は間違いなく、

『フル・ブラスター』を観ている。

 

 

とまぁ、コーエン兄弟の疑惑を一つ暴いたところで『フル・ブラスター』ですが、

 

■今作の見どころとしては、”ドラッグと金”というマクガフィンを巡って繰り広げられるひどく”善悪の境界”が曖昧な登場人物による群像劇そのものにあります。

悪人でありながら話の通じるブライアン、警察に身を置きながらも倫理観に問題があり暴力の虜気味で限りなくヴィランに近い存在にも関わらず、知的障害を持つ娘の為と今回の凶行に及んだチックの存在などがまさにそう。

作り手側のミスリードが割とうまくいっている部分とそうでないところの差が激しいですが、登場人物のやり取りにストレスを感じない作りになっているのは素直にグーですね。グー。

 

■意外とシーン運びや撮り方にも工夫があって、

登場人物を奥と手前で分けて配置しそれぞれ思惑の異なる話をしている二組の登場人物をも同軸上に置いて展開させることで、グループ内で早くも疑心暗鬼が生まれ始めて、関係性にほころびが出来ていくことをしれっと暗示させている。

 

会話シーンやカット割りが過剰になって物語が停滞しないよう、映像テクニックを用いた最大限の配慮を施されています。

 

全体的にチープな印象が否めない本作ですが、ひとつひとつのシーンが冗長に感じることが少ない印象。このあたりは流石娯楽作品はお手の物なマーク・L・エスターといったところ。

 

チックの本業である警察官として追っているヤマと、その件が今回の麻薬強奪事件に端を発するチックの計画とが絶妙に上手く絡みあっていくところも「おおっ」という意外性があり楽しめました。

 

セリフ回しのチョイスにもなかなか気の利いているところがあり、このへんはやっぱり『コマンドー』を作った監督らしい信頼と安定感があって良かったですね。

 

(とはいえ後半にかけての失速感は否めなく、だんだんと凡庸な印象になってしまったところがこの作品が埋もれてしまった要因かなぁとも思いつつ…)

 

んで、

結局”フル・ブラスター”がどういう意味なのかは

さっぱり分かりませんでした。

 

全然本編に関係ないけど、こちらは今作での”ベスト片マユ上げ賞”を差し上げたいくらい、見事な片マユ上げを披露してくれた警部補

 

 

~完~