#極私的偏愛映画 ㉔『 #パペットマスター 』シリーズ おさらい編【オレタチ、必殺仕置人形】

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誰しも人生の中で一度は観るであろう”ホラー映画”。

人によってはその後の人生において、二度と見たくないものとして分類されたり手遅れになるくらいハマり込んだりするものだが、

自分にとってホラーというジャンルに対して明確に”怖い”という認識を植え付けた映画はなんだろうと幼少期まで遡りそのルーツを探ってみた。

 

『リング』『富江』?いや。。。

 

『パペットマスター(1989)』だ

 

今、観返すと怖さよりパペットの可愛さや愛おしさの方が勝ってしまうんだけど、

初めて観た当時は本当に怖かった。

 

当時は。

 

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幼少期からオモチャ収集癖があったにも関わらず、当時は部屋と呼べるような部屋が与えられなかったので、両親がCDの収納に使っていた腰くらいの高さの棚の上をオモチャ陳列スペースとして活用し、手持ちの怪獣ソフビやアメコミキャラのフィギュアズラーーッと並べて悦に浸っていた。

 

その棚が玄関から居間への3mほどの廊下の壁に沿って続いていたので、来客者はもれなく自分のコレクションを一望してから我が家に入ってくるのだけれど、父が気まぐれで買ってきた『パペットマスター』をVHSで観て以来、

 

「こいつら実は夜な夜な動き出していて、自分たちを雑に扱っている僕の命を狙ってるんじゃないか…?」

 

という恐怖と疑心に駆られて、翌日には棚の上の人形たちを壁の方に向かせて、絶対に目を合わさないようにしたくらい怖かった記憶がある。

 

前置きが長くなったけど、本シリーズのざっくり紹介。

 

第一作目の『パペットマスター』が公開されたのが1989年(平成元年)の夏。

そこから「ビデオリリースのほうが儲かる」と賢明な判断をした制作サイドが同年10月に早々にビデオ版をリリースして、VHS全盛期の勢いにあやかって日本でも翌年1990年には字幕版VHSがリリースされた。

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物語の大まかな流れとしては、人形遣い(パペットマスター)であるトゥーロンとトゥーロンの手によって生み出され、命を吹き込まれたパペットたちによる半世紀にわたる殺りくの物語だ。

時に悪人の手に渡り邪悪な必殺仕置人形集団と化したり、復讐の代行人となって悪党をバッタバタと倒したり、悪魔と戦ったりと、主従するマスターによって””にも””にもなる、というのが『パペットマスター』に登場するパペットたちの面白いところ。鉄人28号と描いているテーマはそう変わりない。

 

 

、、、(え?)

 

 

物語の骨子だけみていくと、本作の前年に公開され大ヒットを記録した『チャイルドプレイ(1988)制作:MGM』のヒットにあやかって、当時のパラマウントが二匹目のドジョウを狙って制作されたらしい背景がうかがえるのだが、あまり知られていないが、一応原作のコミック版も存在する。

 

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早々に比較的低予算で回せるビデオリリースに切り替えた甲斐もあってか、結局2021年現在に至るまでにシリーズ累計14本も続編が製作されるご長寿シリーズになってしまった。

 

それなりに長く続くシリーズであれば、誰かしら伝承として語り継ぐマニアが居てもおかしくないのに、なぜか本作について国内で話題に上げる人間が少ないのにはそれなりにワケがあるんだけど、その辺はまぁ後述。

 

1作目は「50年前に突如命を絶った伝説の人形遣い”トゥーロン”の謎と彼が残した不気味な人形にまつわる物語」として幕をあける。

 

トゥーロンの伝説に惹かれ、彼が最後に暮らしたとされる廃ホテルにツアーと称して集まる数名の男女。事の発起人となったホテルの主人の不自然な自殺を皮切りに、命を持った殺人ドールたちによってツアー客はひとり、またひとりと命を落としていく。(その中でも予知に長けた超能力者がいたりと、もうわからんわからん

 

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なぜ人形たちはホテルの人間を殺すのか?だれが”パペットマスター”なのか?というミステリー要素を含んだ謎めいた物語展開になっている。

これだけ聞くとそれなりに興味を引かれる内容なのだが、実際のところホラー映画としての演出はともかく、抑揚のないシーン展開、とっかかりのなさすぎるストーリーテリングなど、様々な疑問を払拭するぐらい映像作品としてのクオリティはアレで、

 

ぶっちゃけ、かなりつまらない部類に入る。

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続編の『2』では『1』のその後の物語としてトゥーロンの復活劇やその目的である亡き妻の存在などが描かれるのだが、これもまぁかなりユルユルと映画が進行するので、お世辞にも名作とは言い難い。

 

以降の作品でトゥーロンはそれなりの”人格者”として描かれている反面、改めて『2』を観るとびっくりするくらいトゥーロンがクズ寄りに描かれてるので、半ば黒歴史認定してもいいとマジで思ってる。

 

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シリーズ最高傑作と呼び声の高い『3』はトゥーロン存命にまで時代を遡り、彼がパペットを殺人に用いたきっかけや、『2』で示された”妻”の背景が描かれるのだが、このへんからトンデモ映画の代名詞”ナチス”が登場するようになり、以降のシリーズでも隙あらばナチを入れてくるようになる。

 

さらに後発のシリーズでは、悪魔の化身である”大魔王”率いる悪魔人形VS必殺仕置人形の「バーサス2部作」が展開されたり、人工知能を搭載したロボット軍団が登場したりと、

 

シリーズとしてかなり引き返せない様相を呈してくるのだが、

 

パペットたちに宿る生命の秘術”と”人形遣い”というモチーフを描いているという点に関しては、まぁギリギリ一貫している。

 

ここまで書いておいてアレだけど、ぶっちゃけ僕もVHSを所有している『1』以降のストーリーも感想もかなりあやふやだ。

 

というのも、今シリーズが持つホラー映画としての”ユルさ”はともかくとして、2021年の時点で国内でDVD化されているのはシリーズ8作目にあたる『悪魔の人形伝説』と2018年にリブートされた『パペットマスター(2018)』のみで、冒頭の『1』や以降のシリーズに至ってはVHSでしかその存在を確かめることは不可能となっている。

 

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どうしても観たい!という場合は、多言語版のDVDボックスが海外経由で買えるのだが、当然ながら日本語字幕は無いので、英語が理解できない限りただただ苦痛の時間を過ごすことになるとだけ言っておく。

 

そりゃあ語るやつもおらんわな…

 

とはいえ30年の積み重ねは伊達ではなく、海外でも日本国内でもカルト的な人気はあるようで、特に『1』が公開された際には、映画の制作にあたったフルムーン・ピクチャーズの玩具部門である”フルムーン・トイズ”が数多のバリエーションでフィギュアシリーズを展開していた。

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カラバリ返り血Ver蓄光Verなど当時のマクファーレン商法にあやかったような売り方が鼻についたが、服が基本的に布地を使用したファブリックだったり、クリアパーツの使用や発光ギミックが内蔵されてたりと、オモチャとしての楽しさを前面に提示した良商品だった。

 

そこそこヒットした商品だったのか、バカみたいに大量に余った在庫が時を経て漂着しただけなのか定かでないが、90年台の後半にはちょっと古めのオモチャ屋やリサイクルショップに行くと必ずといっていいほど『スポーン』と並んで『パペットマスター』の何かしらのフィギュアを目にした記憶がある。

 

布教の手段も絶たれ作品の評価も右肩下がりで地を這う勢いにも関わらず、

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それでもカルトなファンを生み出し続け、果てには米国の大手フィギュアメーカーであるNECAから2021年新作のフィギュアまで発売されてしまうのだから、細く長く愛されるにはそれなりの理由があるに違いない。(単にNECAがアメリカ随一で狂ったオタクフィギュアメーカーだからという説もある

 

レビューもしたんだぜ

youtu.be

 

それはひとえに、シリーズの主役であるパペットたちがこの上なく魅力的で、

愛おしい存在ゆえである。

 

目を引く奇抜なデザイン、

時には人間にたやすくやられてしまうお茶目さ、

自然で味のあるストップモーション映像、

マスターに忠実な健気さや、敵とみなした相手への容赦のなさのギャップ、、、

 

それらすべての要素が組み合わさって、ストーリーなどどうでもよくなり、ただ愛くるしく鮮血を散らすパペットたちを見ていたいという気分にさせてしまうのが『パペットマスター』シリーズのカルト的とされる所以だろうと思う。

 

同じく、バイオレントな『トイ・ストーリー』と評される『スモール・ソルジャーズ』とかなり似通った性質をもつ作品であるとは思う。

shin-tayo.hatenablog.com

 

パペットたちはそれぞれシリーズ内で退場や復活を繰り返していて、いわゆるイツメン的なメンバー戦力外通告キャラ劇中死亡キャラなど多岐に渡るわけだが、

今回は主に特に人気の高い『1』~『3』のパペットに絞って紹介したい。

 

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パペットたちのリーダー的存在である”ブレイド”(画面中央)

おっとり癒し系ピエロの”ジェスター”(右から2番目)

ドリル頭で殺傷力ピカイチの”トネラー”(画面右上)

腕力自慢の”ピンヘッド”(画面左上)

体内にヒルを飼うセクシー担当”リーチ・ウーマン”(画面右側)

汚物は消毒だぁ~担当。期待のニューカマーロボット系男子”トーチ

六本腕の復讐代行ガンマン”シックスシューター

 

当然ながらそれぞれのパペットに名前があるわけだが、劇中でその名前が呼ばれることは少なく、「手がナイフのやつ」とか「気味の悪いピエロ」とか散々な言われよう。

 

以下の画像は『1』のVHSのパッケージ裏に書かれた各パペットの和名なのだが、

ノリが完全に『宇宙忍者ゴームズ』のそれなのだ。

dic.pixiv.net

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ブレイド=<<ガリガリ博士>>

ピンヘッド=<<ジャイアント・コテツ>>

トネラー=<<ドリラー将軍>>

リーチ・ウーマン=ディープ・スローター

トーチ=<<鉄人バーベQ>>

ジェスター=<<ピエロ・ザ・キッド>>

 

 

_人人人人人人人人_
> 鉄人バーベQ <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

 

 

誰だあっ!!この名前を考えたのは!!

、、、というのは根強いファンの中でもかなり長く擦られているネタで、実際本編では全く登場しない名称につき、まごうことなきネタである。

 

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登場順いうと一番のニューカマーはシックスシューター(『3』で初登場)なのだが、『3』が『1』の50年以上前の時代を描いた前日譚のため、実際はトーチがこの中では一番の新顔という事なる(『2』で登場)

 

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はんなりしてて可愛い

リーチ・ウーマンに関していえば、ナチスによって命を奪われたトゥーロンゆかりの人物(というか妻)の生まれ変わりに近い存在であることが『3』で明かされるにも関わらず、同時に『2』での唯一の死亡パペットでもあり、彼女の死に際して「チッ、人形が壊れたじゃないか」とトゥーロンが吐き捨てることから、シリーズとしての矛盾具合ガバガバのキャラ設定を指摘される一因になっている。

 

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印象深さでいえばピンヘッド=ジャイアント・コテツは、パペットの中でも最大の巨躯を誇るという設定を駆使して、たびたび腕部が実際の人間の腕で表現されることがあり、彼の力強さを印象付けている。(頭がポンと抜かれると途端に無力化してしまう所も可愛い)

 

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シリーズ通して最強と謳われるシックスシューターだが、その野暮ったいルックスとは裏腹に、「妻をナチスに殺されたトゥーロン」の無念を晴らすために、影のように現れては特徴的な6本の腕から繰り出される豆鉄砲の鬼連射でナチスをハチの巣にするという、エグいフェイタリティも相まって、実質『3』における主人公格といっても差し支えない存在感を放つ。吹き替えやるなら故・納谷吾郎さんだっただろうな、、、

(見たらフィギュアが欲しくなる筆頭。平成ライダーかよ)

 

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シリーズ最古参であるトネラーも黒目がちな虚無の表情、絶妙なオッサンくささに反して”殺人兵器”としての実用性も相まってかなり人気の高いキャラだ。

軍服が嫌いなオタクはいないんだよな、、、

 

これ以降も新たなパペットが登場したり、『3』よりはるかに昔を描いた作品があったりするものの、個人的にはこのシリーズがそこそこ良質なエンタメとして鑑賞できる限界が『5』までだと思っている。

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というのも、以降の作品自体の内容が『3』で触れたナチスによるオカルト傾倒ネタに振り切れたり、わりと突拍子もない方向にいってしまったりと、チープの方向に全力で突き進んでしまうからなのだ。

 

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ダビデとゴリアテじゃないが、やはり小人が巨人を倒す構図だったり、身の丈が半分以下の存在に人間が圧倒されてしまう瞬間が面白かったりするわけだが、やっぱり人形VS人形(ピエロ軍団や邪悪な赤ちゃん人形)の構図といった発想の乏しい展開が連続したりするとさすがに飽き飽きしてしまう。

 

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そういう意味では、『1』での「とにかく体格の差がある相手は寝技に持ち込むか、高所のポジションを押さえる」というパペットたちの戦略は、今思えば総合格闘技や中国春秋時代より伝わる兵法書”孫子”にも通ずる思想だったのではないかと妄想をたぎらせるが、別にそんなことはなかったという。

 

あとは、とにかく作を追うごとのパペットたちの造形の劣化がかなり著しい。

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10作目ともなると、もはや本家『ウルトラマン』シリーズと『ウルトラファイト』内での怪獣造形くらいその差が歴然としてきてしまって悲しくなるのだ、、、、

 

そろそろ5,000字に到達しようというくらいの熱量になってきたので〆ようと思うが、

現在は前述のとおりVHS以外の視聴が難しい作品のため、だいたいのストーリーさえわかればいい、という酔狂な方はYoutube上に転がっている切り抜きを楽しむだけでも良いと思う。(なぜならそれがほぼ全てだからなのだが、、、)

 

もし観るなら『1』と『3』だけでも良いとさえ思う。

 

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特に『3』はさすがシリーズ最高傑作と呼ばれるだけあって、存命のトゥーロンの復讐劇とオカルト要素、パペットのキャラクター映画の側面が奇跡的にマッチしているし、監督が『ザ・インプ』のデヴィッド・デコトーなだけあって、エンタメとしての見せ方や展開がしっかりしている。(ホラー要素は薄いけど)

 

『4』~『5』はもうただの妖怪大戦争みたいになってくるのに加えて、監督の欄を見ると「ジェフ・バー」とあるので、「あぁ~、、ジェフ・バーか、、、」と思うだけだろう。

 

パペット・マスター(字幕版)

パペット・マスター(字幕版)

  • ジェニー・ペリサー
Amazon

 

2021年現在ではリメイク版である『パペットマスター(2018)』がネトフリ及びアマゾンプライムでサブスク視聴することが奇跡的に可能。

けれど、はっきりいってオススメできない出来栄え(デザイン、シナリオ、演技など)なので期待はしないほうがいい。

 

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2018年の最新技術によって劣化したトーチくん

数少ない見どころは50年以上前のシロモノとは思えないドローンパペットくんの身のこなし、鮮やかな(只の)カカシ大殺りくショー。唯一まともな演技を見せる『1』からの再演である『死霊のしたたり』で有名なバーバラ・クランプトンくらいなものでしょうか。

 

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なんだか批判的になっちゃったけど、

 

個人的には大好きなシリーズなので、酔狂なメーカーさんは早く日本語版ブルーレイBOXを出してください出しやがれコノヤロウ

 

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あとNECAは超カッコいいことで有名な黒服Verのシックスシューターを出してください。

 

頼むでホンマ。