極私的偏愛映画⑬『ヴィドック』連続殺人鬼”鏡の顔の男”を追う、超異色の仏製探偵ホラーの怪作。
今回はかなりの変わり種ダネ、フランス版『フロムヘル』とも言うべき怪作、
『ヴィドック』をご紹介。
これを観ている人はそうそう出会ったことがなく、オススメしてもクセが強すぎてハマる人はハマるし、ダメな人はダメな場合が多い。
要するに、筆者ホイホイな映画なわけだが、早速やっていきましょう。
(風邪気味なので、やや文章が荒れめ)
18XX年、フランス全土を揺るがした連続殺人事件が起こった。犯人は鏡の顔を持つ男。物語はヴィドックが鏡の仮面を被った男に殺された所から始まる。『ヴィドックが死んだ』号外が町中に捲かれる。その号外を読んだ詩人エチエンヌ・ボワッセは、ヴィドックと相棒のニミエがやっている探偵事務所へ駆けつけた。
18XX年、フランス全土を揺るがした連続殺人事件が起こった。犯人は鏡の顔を持つ男。物語はヴィドックが鏡の仮面を被った男に殺された所から始まる。『ヴィドックが死んだ』号外が町中に捲かれる。その号外を読んだ詩人エチエンヌ・ボワッセは、ヴィドックと相棒のニミエがやっている探偵事務所へ駆けつけた。
今作は、「連続殺人鬼”鏡の顔の男”を追い詰めるも、思わぬ”鏡の顔の男”からの反撃に遭い、やがてヴィドックが釜戸の中に落ちてしまう。ヴィドックは鏡男に「死ぬ前に顔を見せてほしい」と哀願。そして鏡男の顔を見たヴィドックは、自ら手を離して釜戸へ落ちる」という、「主人公の死」から始まる。
翌日の街中を舞う号外には「ヴィドック死す」の文字。
相棒だった助手のニミエはヴィドックの訃報を耳にし、事務所の物を破壊しつくして、ヤケ酒で酩酊状態。
そこへ若手作家を自称する、エチエンヌ・ボワッセという若者が訪ねてくる。
元々は伝記執筆を依頼されていたエチアンヌだったが、既に故人となったヴィドックの
やり遂げられなかった最後の仕事を終わらせるため、ヴィドックが死の直前までに会っていた人物を辿り、彼の死の真相を探ろうとする。
今作は、エチアンヌがヴィドックの約2週間にわたる”鏡の顔の男”への捜査過程を追体験する形で進行していく。
過去と現在が交差する、なかなかに凝った筋書きに加えて、今作の最も突出して素晴らしいのはダークな世界観と絵画のような美しさを湛えたビジュアルだろう。
今作は『スター・ウォーズ EP2』に先駆け、世界で始めてデジタルによる撮影を試みた作品であると言うが、絵画のような極彩色と陰影の強さ、レイアウトの収まりの良さと絵面のクールさは、さながら永続的に見せ続けられている悪夢のよう。
今作のヴィランである”鏡の顔の男”のビジュアルもこれまた見事で、”切り裂きジャック”を連想させる、この連続殺人鬼は、劇中では“鏡の顔を持つ幽霊”の都市伝説として語り継がれている。
ある特殊な方法で精製される鏡に人間の魂を吸い取らせることで、数世紀に渡って生きながらえてきたという、まさに不老不死の怪人である。
のっぺらぼうな仮面と、女性のあえぎ声のような奇声を発しながらクネクネと彷徨う様は、さながら亡霊のような雰囲気を携えていて、なかなかに気味が悪くカッコイイ。
主人公であるヴィドックを演じるのはジェラール・ドパルデュー。
頑固そうな見た目に反して、人間的な懐の深さや知的さも見える、まさにハマり役で、重量級のホームズといった感じだ。
華やかでありながら、比例した影の濃さを感じさせるフランスの描写も、
豪華絢爛というよりは、僅差で悪趣味の部類に属する。ちょっとした”見世物小屋”のような怪しい雰囲気があって最高だ。
官能的ともいえるが、かなり変態っぽく、ゲテモノ系映画に寄った内容になっているのも、筆者的にはポイントである。
あとは、今作は顔芸偏差値が異様に高く、基本的に「我々、貴族でゲスでございます」という、いかにもな顔立ちの俳優がバンバン登場するのも有難い。
変態趣味に興じる貴族三人組(バカ)をカメラは非情に捉えていく。
そうして「やれやれ」とヴィドックが貴族の悪趣味に辟易するという流れががシーンの定番になっているのがシュールだ。
今作は基本的にミステリーものであるので、ストーリーに関する詳細は書き省くが、
官能的な雰囲気やビジュアルはなかなかクセになる。とにかく一度見てみて、
鑑賞者の感性の判断に委ねざるを得ない悩ましい一作である。