ぶっちゃけ感想『ガンズ・アキンボ』根暗のクソリプラーを襲う理不尽な悲劇!”アキンボ(二丁拳銃)”となりデスゲームをサバイヴせよ!

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ダニエル・ラドクリフって、現在進行形で奇妙な役者のうちの一人で、

ハリーポッター』シリーズのあとは順当に”子役時代にヒットした役者”によくあるアルコール中毒になったりもしながらも、ちゃっかり19億円近い資産を築いたりもしてるのに、その後のキャリアで出演(で)る映画は正統派とは言い難いイロモノばっかりで、正直どこを目指しているか分からない、軌道のなさが逆に目を引くようになっていったんだよな。

 

んで、今回はそんなラドクリフが「おじぎをするのだ!ポッター!」以来の理不尽に晒される『ガンズ・アキンボ』の鑑賞記になります。

 

※ネタバレ全開つき、鑑賞前の方はご注意ください※

 

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クソみたいなリスのアプリゲーを作っているゲーム会社勤務の冴えない青年マイルズ(ダニエル・ラドクリフ)。常にプロテインを手にしてるジョックス系の上司には毎日イビられるし、彼女のノヴァとは気まずい別れ方をするわで散々な日々を送っている。日課のウサ晴らしでデスゲーム実況のコメント欄にクソリプを送りつけていたら、はずみでゲームの管理者宛てに暴言コメントをしてしまい、それにカッチーンきた管理者に住所を特定された挙句、自宅に乗り込まれて両手に銃をボルト留めされ、デスゲームに強制参加させられてしまう。

ことの発端となるデスゲームというのが”スキズム”と呼ばれる違法サイトで、実際の犯罪者や異常者をマッチさせ、それを不特定多数の視聴者に公開して殺し合いを実況して楽しむという、まぁR18指定のAPEX LEGENDSみたいなもんなんだけど、そこの最強のサイコパスキラーと名高いニックス(サマラ・ウィーヴィング)がマイルズの対戦相手になってしまうものだからもう大変。

 

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この映画、様々な90年代を代表するカルチャーや、近年ヒットした映画やゲームのパロディのコラージュのような様相を呈していて、元ネタと思しき例を挙げだすとキリがないが、

・ゲーム『モータルコンバット』と本編におけるフェイタリティ描写

・ジャン・クロード・ヴァン・ダム『ハードターゲット』

・主にガイ・リッチー作品全般におけるトリッキーな人物描写と映像表現

・『ジョン・ウィック』を参考にしたであろうライティングと戦闘スタイル

・明らかにAPEX LEGENDSのテーマ曲を意識したと思われるスコアがある

 

など、枚挙に暇がないのだけれど、近年公開された中では『ナーヴ(2017)』なんかが近いのかもしれない。いずれにしても殺人ゲームに熱狂する大衆という退廃的なモチーフはそれこそ『デスレース2000』にしてもそうだし、古代ローマのパンクラチオンまで遡ることができるのだから、まったく人間の業は変わらないってワケ。

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よく「ゲームみたいな映画だった」と揶揄される作品が多々あるけれど、今作に限っては「映画みたいなゲーム」をプレイさせられた感覚に近くて、というのもキャラクター説明に割かれる時間尺や展開、ザコ敵無双からの中ボス戦闘、俗にいう”バレットタイム”的な操作シークエンスを考慮したような演出など、マイルズ=プレイヤーとした2時間弱で収まるSteam配信のゲームをプレイしたような錯覚に陥るのだ。

 

初見の率直な感想としてはいかにも”娯楽作品”といった感じで、シナリオ的に粗も多く、お世辞にもベタ褒めという気分ではない。

今作に見られるオリジナルな要素といえば、やっぱり腕に銃を取り付けられてしまったという特殊過ぎる状況そのものと、現在進行形で展開するネットを通じたFPS(一人称視点)ゲームに興じる人々というモチーフのみなので、どこか既存の映画で見た記憶のあるコラージュのような作品に仕上がっている感は否めなかった。

 

誤解のないように言っておきたいのは、コラージュ的にまとめ上げられた作品が悪いという意味ではなく、結局のところオリジナルである部分と相互作用してどうなのかという点で、この作品はそういう意味では十分に楽しめるし、問題は肝心のシナリオがやや時代遅れなものに感じてしまったところ。

 

”スキズム”自体の描かれ方に関しては、別段真新しさは無いにしても、ニックスを除けば冒頭でよく分からないままバンごと爆死した輩くらいしかマトモな描写はないし、

それこそ、マイルズVS犯罪者集団という『ジョン・ウィック2』的なシチュエーションにして、その中でニックスだけが秀でてるとか、そういう見せ方はなかったものか…

 

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結局、お話自体は必然としてマイルズとニックスが共闘して”スキズム”を潰す方向に向かうけど、それに至る過程でも、

スキズムの親玉であるリクターを殺したいニックスがマイルズと手を組む利害が見つからないし、特に目を見張るツイストはない(これに関しては無くてもいいか…)

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一応のヒロインである元カノのノヴァ典型的な”囚われのプリンセス”になってしまってて、正直「このご時世に今更それをやる?」という気持ちになった。

むしろ、警察署のシーンでの例のマーブルチョコの伏線を張っておきたいがために用意したんじゃないかと勘ぐってしまう。

 

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ニックスのキャラクターについても、一人称”俺”なガールで登場した頃はバチバチ決まってて良かった割に、変なところで急にかよわい女の子感を出してくるし、

そもそも最強という割にはエイムがクソすぎんか?

 

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主人公のマイルズはボンクラなのは間違いないけど、あまりにもネットに対して情弱だし、FPSゲームをやり込んだり部屋に『コマンドー』や『ランボー怒りの脱出』のポスターが貼ってある割には、銃の扱いに関して無知すぎて、まったくオタク感はないし…(いくら特殊な状況とはいえ、照準を合わせて撃つ、くらいはレクチャーされなくても分かるやろ)ボンクラ=オタクのレッテルは間違いだとも思うけど、

仮にもプログラマー職に就いている人間が、IPアドレス経由で自宅を特定されるというのも…自分的には物語としてリアリティを欠きすぎててのめり込めなかったな~~という印象。

 

とにかく脚本家がとっととお話を進めたいがために、安易に処理されているところが多すぎる。

 

好きだった女の子も失い、職も友人も失ったマイルズが事件をきっかけとして”スキズム”を追うハンターになる…みたいなオチにも微妙に納得がいかず

ゲームに強制参加させられてしまったことに対する怒りをぶちまけるシーンはあったけど、別段、デスゲームとそれを「観る」という行為そのものに対する是非を問うような葛藤があったわけでもなく、人の命を奪うことに対する快感に目覚めた描写も特に見当たらなかったのでマイルズの行動の原理がさっぱり分からない。

 

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”スキズム”を世界展開するのを阻止したはずなのに、誰がいったいどこで相変わらずゲームを運営しているのか?警察内部の裏切り者は始末したはずだし、なんならニックスの父親なんて明らかに不自然な殺され方をしてるし、そもそもニックスを取り押さえたかった父親は、なぜ建物の裏側に隊員を回り込ませなかったんだ!?本気でやれ!!ヌルいぞ!!

 

も~~~色々気になる!!!

 

……とにかくまぁ、ノリで見る映画としてはよくできているけれど、気にし始めたらキリがない!!そんな映画でした。

 

本当なら劇中で使用されている銃のアレコレとかを書きたかったんですが、内容があまりにもアレだったので、暇な人にでも任せることにします。