【ミニレビュー】『マンダロリアン』season_1 スターウォーズ・サーガの正当後継作。これぞ”我らの道”だという話。有無は言わせん。
遅ればせながら、ディズニー公式チャンネルで配信されている『マンダロリアン』をミニレビュー。
既に全話配信済で、視聴は去年のうちにしていたのだけれど、今作が『スターウォーズ』というご長寿作品にとって”新たなる希望”になる可能性をみたので、改めてピックアップしておきたいと思い、ご紹介。
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マンダロリアンとは?
映画『スターウォーズ_帝国の逆襲』が初出の戦闘民族の総称。
惑星マンダロアという場所が彼らの生家だったのですが、民族粛清など色々あって、種族は各地に散り散りに。
最も有名なのはボバ・フェットという賞金稼ぎ(バウンティハンター)のキャラクターですが、出自が父であるジャンゴ・フェットのクローンだったりするため、正式にはマンダロリアン族ではない等、色々とややこしいので今回は割愛。
目元のT字型バイザーが特徴的な”マンダロリアン・アーマー”と呼ばれる鎧を身に纏っており、原料に使われる”ベスカー”なる金属片は高い強度を誇る材質で、『マンダロリアン』はこのベスカーを巡る物語にもなっている。
下敷きの設定としては、帝国軍に略奪されたという事になっている。
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『マンダロリアン』のおおまかなあらすじ
主人公はタイトルコールそのままの、「マンダロリアン」。
通称「マンドー」と呼ばれる名うての賞金稼ぎであり、本名は終盤に至るまで明らかにされない。(ので、ここでも伏せておこうと思う)年齢不明。顔は種族の掟に従って、マスクを脱がない為、誰も見たことがないというアンノウンぶり。
口数が少なく、寡黙なガンマンといった風情で、腰のホルスターに装備されたブラスターに加えて、敵を一瞬で灰と化すほど強力なロングレンジのライフル。
腕に装備されたガントレットはワイヤー発射が可能で、火炎放射器も内臓されていたりと、シュッとしたスタイルとは裏腹に、全身武器庫のような充実ぐあい。
物語冒頭では、どうやら各地に散り散りになった”ベスカー”の金属片を求めて、各地を転々としているらしいことが明示され、装備もヘルメットを除けば、ジャンク品を寄せ集めたようなツギハギ状態の出で立ちで登場する。グローブのイエローの差し色がクールだ。
物語が進むにつれ、報酬として受け取ったベスカーがマンドーの手元に集まるのだが、その度にマンドーは同じくマンダロリアンのギルドに属するアーマー(鍛冶屋)の元を訪ね、徐々にアーマーをアップグレードしていく。
この辺りがドラクエのクエストのような、RPG感があり、とても良い。
序盤の#2では右肩。#3では上半身と左の太ももをベスカー製に置き換えた、下記の全身銀ピカのアーマーを着込んでの登場となる。
第二次大戦中の爆撃機みたいなルックスで、ギラギラしてオラついた装備に反して寡黙なファイターというのは男の子心をくすぐりますね。
う〜〜ん、マンダム。
ある日、賞金稼ぎギルドのボスである、カルガ(カール・ウェザーズ)を介して、大口の依頼を受けることに。
聞けば、かつての帝国軍の残党である指揮官からの依頼だという。
なんでも「誘拐された、ある人物を奪還してほしい」という依頼らしく、唯一の情報は「50歳を超えた老体らしい」ということだけ。
そもそも依頼主がヘルツォークな時点で断れる訳もないのだが、
報酬として大量のベスカーを明け渡すことに同意したマンドーは、気乗りはしないまま依頼の人物の捜索のため、宇宙船を駆る。
なんとか目的の場所までたどり着くが、そこはならず者の巣窟と化しており、
ダブルブッキングで依頼を受けていたドロイド型賞金稼ぎのIG-11と共闘し、
アジトの制圧に成功し、目的の人物を奪還するため、アジトに踏み込むマンドー。
そこで待っていたのは、かの「ヨーダ」と同種族の赤ん坊。
「成長スピードは種族によって異なる。この種族は、2世紀以上生きることもある」
IG-11はそう告げ、ベイビー・ヨーダ(ザ・チャイルド)に銃口を向ける。
「そちらは生け捕り。こちらは抹殺を依頼されてる」
冷たく赤子に銃口を向けるIG-11に対して、ただその光景を無言で見つめるマンドー。
民族虐殺に遭い、両親を奪われ孤児となった自らの子供時代を反芻していた。
気がつけば、マンドーはIG-11に対して銃の引き金を引いていた。
機能停止し横たわるIG-11、事情も知らず無邪気にマンドーへ手を差し出すベイビー・ヨーダに対して、呼応するように指を出すマンドー。
というところで#1は幕を閉じる。
以降は寡黙なガンマンであるマンドーと、謎の力を秘めた子供であるザ・チャイルドという、擬似的な親子関係のコンビによるロードムービー(珍道中)という体を成してくる。
さながら『子連れ狼』のようだ、と配信直後から評されていたが、
擬似的な親子関係といえば『グロリア』『レオン』も忘れがたい。
いずれにしろ、このジャンルには世代を超えた強い魅力があるものだ。
両者は比喩的に年齢の離れた男女の恋愛を想起させるが、むしろ『マンダロリアン』で描かれる親子関係は、どこまでもプラトニックで、現代の”イクメン(育児するメンズ)文化”を連想させる。
家事が女性だけのものではなくなりつつある現代、どこまでもポリコレ的なディズニーらしい題材だが、一人と一匹のふれあいは見ていて微笑ましく、いつまでも見ていたいという気分にさえさせてくれます。
徐々に女戦士のキャラ・デューンや復活したドロイドのIG-11などもマンドー・ファミリーに加わり、ますますドラクエかよというそれなりのパーティ規模になった頃には、殺伐とした序盤のムードから一転してNHKの大河ドラマをみているような気分にもなって、かつそれでも楽しいのだから、大したもんです。
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世界観とそれを彩る音楽
今作はもともと、人気キャラクターであるボバ・フェットをスピンオフ映画化する予定だったものが、全8話のテレビシリーズとして発展したもの。
経緯としては、メインタイトルである劇場作品との並行を避けるためだったなど、色々と事情があるようですが、ネット独占配信用のタイトルとしてのミニエピソードとして、マンダロリアン族の話というのは適していて面白いという判断に至ったとのこと。
製作総指揮は『アイアンマン』の監督を務め、俳優としても活躍中のジョン・ファブロー。
近年では『ライオン・キング』や『ジャングル・ブック』など、CGメインの映画を手掛けている印象が強く、基本的に職人監督というイメージもあるが、半ば自主制作的に作った『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』が、個人的に最高だったので、やはり手堅い映画を作るんだと期待してしまう。
エピソードディレクターもかなり充実していて、女性監督を多く取り入れたところはいかにもディズニーといった感じだが、ロン・ハワードの娘で女優のブライス・ダラス・ハワードが入っていたり、最終エピソードは『ソー バトルロイヤル』で一気にスターダムに駆け上がったタイカ・ワイティティを投入したりと、話題性と実力派のバランス感が見事。
中でもデボラ・チョウが複数エピソードを担当した回は、アクション性こそ無いものの、神経質なマンドーの心情描写が無表情なマスクを通して伝わってくる妙味を見せる。
サウンドトラックも大変に素晴らしいので、テーマ曲だけでもぜひ聞いて頂きたい。
今作の音楽を担当するのは、近年メキメキと評価を上げつつある、ルドウィグ・ゴランソン。
同じくディズニー体制となったマーベル作品『ブラック・パンサー』における民族音楽と現代的なメロディーの融合で好評を受けた、新進気鋭の映画音楽家の一人です。
今作『マンダロリアン』においてもゴランソンのジャンルミックスの手腕が遺憾なく発揮されており、
原典である『スター・ウォーズ』のもつジョン・ウィリアムズの壮大さを残しつつ、
モチーフである西部劇(ウエスタン)に根付いた、エンニオ・モリコーネ風の渋さの両立という面で、今作の世界観を引き立てることに大いに貢献していると思います。
何より、マンダロリアンのもつ「佇んでいるだけ」「歩いているだけ」でカッコいい、という”佇まい”のクールさを引き立てるイントロ。
勇敢さを戦士の昂り表すドラムと管楽器中心のパートに入り、最も盛り上がりをみせる今作が宇宙を舞台にしたSF作品であることを思い出させてくれる壮大さを示しつつ、最後には泥臭い大地に戻る。という、最高のテーマ曲に仕上がっているかと。
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『マンダロリアン』のフィギュアはこれを買え!
S.H.フィギュアーツ スター・ウォーズ ザ·マンダロリアン (ベスカーアーマー) (STAR WARS:The Mandalorian) 約150mm ABS&PVC&布製 塗装済み可動フィギュア
- 発売日: 2020/09/30
- メディア: おもちゃ&ホビー
先日、BANDAIからS.Hフィギュアーツのレーベルで#1のみ登場するツギハギスタイルのマンドーが発売され、筆者も勿論購入したが(リンクはベスカーアーマー仕様)、個人的には「遊ぶ側の気持ちをあまり考えていない」ような仕様になっており、細かすぎるパーツが多くて、すぐにパーツが吹っ飛んでしまう不親切な設計で、大味に手に持って遊べない。
神経質さが気になるならば、米ハズブロから発売されている6インチのBLACKシリーズがおすすめ。アメトイらしくガシガシ遊べるが、大味故にディテールなどがかなり甘い。腕に覚えのある人はマントが軟質なので布に置き換えるといいだろう。
追って、ベスカーアーマーVerも出るので、予約するならお早めに。
割と手頃な価格帯で買いたいのなら上記2つだが、多少根上がってもそれなりにハイエンドなものが1つ欲しいというのなら、これから発売予定の下記MAFEXシリーズか、高額トイのHOTTOYS製が良いと思います。(特に劇中の頭身バランスに最も近いのはMAFEXかと)
ちなみに僕は全部予約してますね。
ホットトイズ テレビ・マスターピース マンダロリアン マンダロリアン&ザ・チャイルド(2体セット) 1/6スケールフィギュア 茶 TM#014
- 発売日: 2021/06/30
- メディア: おもちゃ&ホビー
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本家『スターウォーズ』で描けなかったこと
『スター・ウォーズ』の人気の原動力となったのは、SF的な世界観もさることながら、”ジェダイ”という神秘の存在があったのだろうと個人的には感じていますが、
どちらも”世界観に没入する”という意味では等しい。
今作『マンダロリアン』では、戦闘民族マンダロリアンというところに着目し、これまでのジェダイ人気に匹敵するジャンルになるのではないかと予想しています。
”ジェダイ”というジャンルは、ある意味本家が”ミディクロリアン”という余計な設定を持ち出したことで、”誰でもジェダイになれるわけではない”という事を遺伝子的な問題にしてしまい、ファンからの大ひんしゅくを買った忌まわしい事件や、エピソード7〜9までの評価の低さによって、やや低迷ぎみのジャンルになりつつある気がします。
作品への没入とファンダムは、作品にとっての”余白”に起因するものですから、
そうした意味では「オリジナルのアーマーが作れる」「覚悟さえ決めれば、誰でもマンダロリアンの一員になれる」という最低限の掟を守ることで、より活発なファン活動を引き出す仕組みを作ろうとしているのかなと。
特に日本は顔出しを嫌うところがあり、フルフェイスタイプのヒーローを好む志向が強いため、アウトローで寡黙、イクメンもこなす凄腕ガンマンというマンドーのキャラクターをきっかけに、これから更に人気が出そうな気がします。
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まとめ
色々と書きましたが、作品自体はライトに楽しめて、なにより、エピソード4〜6あたりの 手触りのある存在感や、チープさを残したテイスト、原典である西部劇モチーフに立ち返った構成には非常に好感が持てました。
「結局、ただのお家騒動じゃん」と思ってしまった本家のエピソード7〜9のクズ映画に比べてしまうと、やはりビッグバジェットになってしまって、仕方がないかと思う部分も、TVシリーズという規模感と連続エピソードなら、かなり良い塩梅になるのだという手応えを感じました。
『ハン・ソロ』を鑑賞した際は、アウトローとか抜かしながらも、そのあまりにもお行儀の良い作風に正直腹も立ちましたが、『マンダロリアン』はディズニー製作ということで、表現的なハードさは少ないながらも、必ずしもハードな描写がエンターテインメントになるとは限らないということを証明してくれたと思います。
その点、今作はかなり良い塩梅というか、主人公がアンチヒーローとして、ヒロイックかつ魅力的に見えるギリギリを押さえてるなと。
ディズニーチャンネルの独占配信ということで、しばらくDVD化の予定はなさそうですが、初回一ヶ月は無料のキャンペーンをやっているらしいので、これを機に一気観してみてはいかがでしょうか?