感想『チャイルド・プレイ(2019)』現代テクノロジーで蘇った”君の親友”。テメェなんか友達じゃねェ!!

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ドーモ。シンタヨです。

 

今回はあんまり評判にならなかった(というか見てる人が少なすぎる説)、

あの名作ホラーシリーズ、『チャイルド・プレイ』の公式リメイク作品。

その名も...

 

『チャイルド・プレイ(2019)』!!

そのまんま!!

 

をご紹介。

 

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こちら、公開としてはアメリカでは2019年6月。日本では7月とほぼズレなく公開された作品になります。

 

現在はNETFLIXで観れますね。(2020 8月現在)

www.netflix.com

チャイルド・プレイ(吹替版)

チャイルド・プレイ(吹替版)

  • 発売日: 2019/11/20
  • メディア: Prime Video
 

  

 

  • 原典『チャイルド・プレイ』の振り返り

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オリジナルである第一作目の『チャイルド・プレイ』が公開されたのが1988ですから、おおそよ30年続くご長寿タイトルといえるでしょう。

 

計7作られてきたシリーズですが、同じく洋ホラーのスターダムといえる『13日の金曜日(全12作)』『エルム街の悪夢(全8作)』といった作品と比べると、数ではやや劣りますが、「長期シリーズは迷走しがち」という、洋ホラーの鉄則を固く守った”信頼できるブランド”といえるでしょう。

 

個人的には、チャッキー以上に頭のおかしい人間しかいないため、相対的にチャッキーがマトモに見えてしまうというジレンマを描いた『チャイルド・プレイ 〜チャッキーの狂気病棟〜(2017)』がお気に入りなのですが、オススメはしません。

 

絶対観ろ。(強制)

 

チャイルド・プレイ ~チャッキーの狂気病棟~(吹替版)
 

 

序盤は、オカルティズムに傾倒していた犯罪者、チャーリーズ・リー・レイが子供向けトイである”グッド・ガイ人形”に乗り移り、”君の大事な親友”を謳いながらも、遠慮無しに関係者or無関係問わずに、バッタバタと人殺しまくり。

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そんなチャーミングなチャッキーと、周囲の人々との愉快な交流を描くハートウォーミングなホラー展開がウリでした。

 

チャイルド・プレイ [Blu-ray]

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  • 発売日: 2020/08/05
  • メディア: Blu-ray
 

 

ところが、シリーズ序盤あたりでかつての恋人(ティファニー)を風呂場で電気処刑にして無理やり嫁にしたり子供が生まれたり首だけにされて監禁されたりと、まるで一人の男の”怒涛の人生”を描いた感動ドキュメンタリーでも見させられているような感動が去来します。

 

第一作目のチャッキーの吹き替えは『機動戦士ガンダム』のブライト艦長でおなじみの

鈴置洋孝さんが演じていました。

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が、鈴置さんの急逝に伴い、以降は納谷六郎さんが担当。

 

中には山崎邦正(現・月亭方正)が吹き替えを担当しているものもありますが、

こちらは一部のDVD版などでご覧になれます。↓

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個人的には、やはり納谷六朗さんの演じたチャッキーが、ビジュアルと反したいかにもおじさん然したヴォイスという感じで馴染み深いのですが、現在NETFLIXで視聴できるシリーズは、すべてチャッキー役を『機動戦士ガンダムZ』のシロッコ役や『ドラゴンボールZ』のブロリー役でおなじみの島田敏さんが演じられています。

 

こちらもなかなかハマっていて、良き。

 

  • オリジナルとの違い

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作を重ねるごとにモデルチェンジを繰り返してきたチャッキーですが、

今回のリメイク版に関しては、明らかに”グッドガイ人形”のデザインに変化がありました。

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ていうか、キモすぎ。

 

当然「こんなもん売れねーだろ」と思っていたのですが、案の定、割と周囲の人間も「キモい人形扱い」しているのが微笑ましかったり。

 

アニマトロニクスも、2019年とは思えないくらい、表情筋の表現がチープで、

おそらくワザとなんでしょうが、それにしても可愛くねぇ。

 

設定に関しては大幅に変更が加えられていて、”グッドガイ人形”にブードゥー魔術によって犯罪者の魂が乗り移ったという設定から、

最新のハイテク機能を備えた人形(バディー君)を、自暴自棄になったプログラマーが解雇の逆恨みでシステムを書き換えてしまった事による暴走。という設定になっています。

 

劇中の”バディー君”の機能は、いわゆる”アレクサ”的な音声入力システムによる、電子機器のON/OFF機能スマートフォンによる遠隔操作でのカメラシステムを標準で搭載している程度のものですが、

特に主人公のアンディ(なんでオモチャ系の映画でよりによって”アンディ”なのか)が所有するぶっ壊れ”バディー君”であるチャッキーは、そもそものエラーで卑猥な言葉に関してのロックが外れているので「おちんこ」とか普通に言うのに加えて、

変態おじさんのジャック・ブラックによる魔改造と覚醒を皮切りに、

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  • 自動車の遠隔操作
  • 電子機器のハッキング
  • 自己学習によるパターン化

といったチートバグ的な能力を次々と会得していきます。

 

特にエグいのは、自動運転のカーシステムをジャックして意図的に人間をぶっ殺したりプロペラの先端にカッターの刃を取り付けたドローンを複数操作する能力、

電子機器は大抵操作出来ますから、監禁、拷問は手を触れずして行えるわけです。

凄いね。現代。

 

また、主人公アンディに対する精神的な揺さぶりをかける「煽りプレイ」もなかなかのもので、

(「お前はいつか母親に捨てられる」、「友達はお前を裏切るぞ」等)

近年のオンラインゲームで湧くゲームキッズの煽り合いを鑑みるに、

なるほど、これが現代のチャイルド・プレイ(児戯)か」と、思わず膝を打ってしまいました。

 

  • リメイク版の良さ

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色々と評判の悪いところだけ切り取られて伝わってくる今作ですが、

なかなか良い部分もありました。

 

まさかこのご時世に『チャイルド・プレイ』 をシリアスなホラーとして鑑賞している層も多くないと思いますが、

今シリーズの最大の魅力は”チャッキー”というキャラクターのタレント性と、「子供サイズの人形が襲い来る」というシュチュエーションの醸し出すユーモラスな映像体験にあると感じます。

ゆえに、どうしても襲われる側は、「早く逃げればいいのに」と感じてしまったり、

いきなり被害者の顔の横にチャッキーが現れたりと、旧作はやや強引な殺人方法が目立つ印象でしたが、

リメイク版はそのあたりの不都合を”電気製品を自由に操作できるチート能力”として埋めてきている点に非常に好感が持てました。

 

これはボクサーが蹴り技や組み技、投げ技を取得して、総合格闘技界にデビューした感覚に似て通じるものだと思います。

 

絶対に売れ残るであろう、相棒のクマちゃん軍団をハッキングして襲わせるのも、

ホラー映画としてはやや拍子抜けなビジュアルですが、なんだか『ターボマン』のブースターを思い出して、涙が止まりませんでした。

 

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ブードゥーというオカルト要素を捨て去った代わりに、現代の宗教ともいえる”テクノロジー”への盲信という視点を取り入れたという点において、今作は十分にホラー映画としてのアップデートに成功したといえるでしょう。

 

僕らは、ゴーストやモンスターに殺されるのではなく、自ら生み出したマシーンに殺されるのだという皮肉は、『ターミネーター』に通じるテーゼでもありますね。

 

極力CGを使用せず、パペット操作によるビジュアルでチャッキーを表現しているところも好感が持てますし、何度見てもキモいビジュアルも、終始親しみを感じられないチャッキーの”不気味さ”の演出に一役買っています。

 

また、チャッキー自身のキャラクターについても、原典のように中身が犯罪者というわけではないので、序盤はどうコミュニケーションを取ってよいか分からないチャッキーに対して、若干の親しみを覚えますが、

やがて「親友になるにはどうしたらいいか」というAIの自問の結果、

パートナーを孤独にすればいい」という結論を悪意なく導き出してしまうのも、

メンヘラ彼女と付き合ってしまったような絶望感があり良き。

 

 

とはいえ難はあります。

 

まずは、主人公のアンディの難聴という障害を持った設定が最後まで活かしきれていなかったこと。同年の『クワイエット・プレイス』は補聴器というアイテムを有効に使っていましたが、今作ではハンディを負っているという設定と、心理的な均衡を欠く描写以上の用途が見られなかったのは残念です。

 

また、やはりチャッキーがキモすぎる点は、どうなんだろうと頭をかしげてしまいます。「この人形なら売れるわ」と納得できる顔立ちだったほうが、映画のアイコンとしても良かった気がするのですよ。

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そう見ると、やはりオリジナルのチャッキーは顔立ちが整っててイケメンだったと思いますし、時折みせる愛嬌も”邪悪さ”が引き立つ要因になっていた気がするんですよね

 

もう少しポップなアイコンとしてチャッキーを全面に出せたなら、これまで『チャイルド・プレイ』という作品に親しみのなかった世代への求心が出来たと思うのですよ。

 

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※上の画像は関係ありません。

 

とはいえ、案外ユーモアに富んだ作品だったので、終始楽しんで見れたことは事実です。

類まれな傑作というわけではありませんが、十分に秀作です。

 

欲を言うなら、映画として「じゃあ、何が”親友”と呼べるのか?」という、

現代における人間関係の複雑さに対する回答や、機械との友好というSF的な視点を監督なりに提示できていれば、もっと優れた映画になったのではないか、と思ったところで本日はこれまで。

 

では、さようなら。

 

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/くたばりやがれぇ...\