マーベル実写化で一番好きなのはネトフリの”ルーク・ケイジ”かもしれないという話
今回は完全に雑談。
というか、ただルーク・ケイジが好きだなぁという話です
マーベル×NETFLIXのコラボで展開中のドラマ、ルーク・ケイジを観た。前々作『デアデビル』から『ジェシカ・ジョーンズ』まで、非常に出来が良かったので期待していた。
本作の魅力は主人公のルーク・ケイジa.k.a”パワーマン”がニューヨークのハーレムを舞台にマフィアや武器商人を相手取った大立ち回り。
ブラックスプロイテーション版、水戸黄門とばかりにバッタバタと悪党どもを完膚なきまでにブッ倒していく。拳で。
”鋼鉄の皮膚を持つ男”として知られる、れっきとしたアメコミヒーローの彼は、過去に無実の罪で投獄された刑務所内での科学実験の被験者として、アワビのDNAを打ち込まれ、強靭な皮膚と常人離れしたパワーを身につけた。
「本当にこれアメコミ?」と思うほど地味なルックス(特定のコスチュームは無く、裏地がキーカラーであるイエローなパーカーを愛用しているぐらい)に加え、”鋼鉄の皮膚とパワー”以外の非リアルな要素が極力抑えてあって、物語はハーレムの裏社会とそこに暮らすコミュニティなどの、現実世界の社会を強く反映させて描かれているため、
煌びやかなアメコミワールドを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。
いってしまえば、所謂”アメコミもの”としては”シブすぎる”内容となっている。
ところが、いざ視聴してみれば、黒人が白人/黒人問わず、銃弾をはじき返しながら悪人をボッコボコになぎ倒していく爽快感、ウータン・クランをはじめとする、ラップ、ソウル、ブルースなどのブラックミュージックが大盤振る舞いかってくらいに流れて超絶ドープでクールなんだこれが。
かつての『黒いジャガー』や『シャフト』などの黒人による黒人のための文化と言われた”ブラックスプロイテーション”的な魅力に溢れた良作でありました。
(ウータン・クランのメソッドマンもカメオで出演&楽曲提供という太っ腹っぷり)
調べてみたら、製作総指揮/エグゼクティヴ・プロデューサーは故ザ・ノトーリアス・B.I.G.の伝記本を執筆した元ヒップホップ・ジャーナリストであり、『ノトーリアスB.I.G. / Notorious』の脚本を務めたことでも知られるチェオ・ホダリ・コーカーとのこと。
なるほどね~
一応、ルーク・ケイジをいわゆる”単独ヒーロー”ものとして捉えた時に、
コスチューム的な要素を撤廃した代償として、代わりに得たものがあったなと感じていて。
それは先ほどから繰り返し言及している”パーカー”という服装が象徴する、
ニューヨーク市ハーレムのストリートの背景そのものだと思うのです。
海外では、パーカーではなく”フーディ”と呼ぶらしいのですが、海外のHIPHOPやブラックス文化の中では、いかにフーディをカッコよく着こなすかというのが通年のトレンドとなっていて、フードを目深にかぶり肩をいからせてストリートを練り歩くというのがステロタイプではありますが、男らしさ=ギャングスタの証明のようなもの。
話をルーク・ケイジに戻しますが、ルークはインヒューマンズと呼ばれる能力者ではあるものの、いたって素朴な男で自らが属するコミューンや身内をなにより大事にする昔かたぎな男でもあるわけです。だからこそ、自分たちの住むハーレムを汚すようなギャングは見過ごせないし、(それによってひと悶着もふた悶着もあるわけですが…)
それを象徴するかのように、ドラマのOPでは、スローモーションでルークの体にハーレムの街頭が投射されていきます。
まるで「街そのものがルークの生きる理由」といわんばかりに。
とはいえ積極的に正体を隠そうとはしません。なにしろ銃弾を貫通しない体なわけですから、そら怖いもんなんてありませんよね。
自動小銃だろうがマグナムを持った相手だろうが、フードをかぶりイヤホンでウータン聴きながら、余裕しゃくしゃくでハッ倒していきます。
とはいえ、自警団的なことをしてればいずれは悪党には目の敵にされるし、
警察にもマークされるわけですよ。当たり前だよなぁ。
でもそこはハーレム。ルークを守るため、ルークの行動に感化されたハーレムの黒人たちが敵や警察の目をくらませるため、一様に銃弾で穴をあけたフーディを着込みだすシーンがあるわけです。
これにはハッとしましたね。
要するに、”警官にとっては黒人というだけで犯罪者”というアレです。
このドラマでは、本国アメリカにおけるそうした社会情勢を皮肉っているのだなと。
ルーク・ケイジにはブラックパンサーのようなイカしたスーツもマスクもありませんが、ハーレムに住む”フーディを着た黒人”という不特定多数のうちの一人という、
”匿名性”を身にまとっていたんだなと。
「誰か」と聞かれれば「ルーク・ケイジだ」と答えるでしょうが、逆をいえば、
フーディさえ着れば”誰でもルーク・ケイジ”になれるのでは?ということ。
期せずしてルークがハーレムというコミューンにとっての希望になったという話です。
穴だらけのフーディを着込んだ住民たちは、あまつさえ通り過ぎるパトカーにフーディの前を開けてみせて非武装を強調する徹底ぶり。
「ほらよ、銃なんか持ってねぇけどよ。捕まえられるもんなら捕まえてみろよ」
という無言のメッセージ。
銃を向けられてなお警官たちをあざ笑ってみせる不敵さには社会的マイノリティとしての逞しさというか、反骨心みたいなものを感じてしまって、グッときましたね。
これ以上はネタバレかな~と思うので、お時間あればNETFLIXで引き続き配信してますので見てみてください。
シーズン2の終わり方に関しては批判もありますし、諸事情でシリーズ打ち切りになってしまったことは悲しいですが、『デアデビル』や『パニッシャー』といったシリーズと同じく、MCUとはほぼ独立しているので初見でも安心だし、CG少なめの骨太なドラマを観たい!という方、ウータンやN.W.Aが好きという方にはおススメの一作です。