世にも奇妙な物語 『穴』
コロナ自粛期間中の体たらくで、モチベーション的に長尺のものを見る気力が沸き起こらず、ダラダラと無気力な日々を過ごすことが多くなってしまった。
なぜかYoutubeで『世にも奇妙な物語』が”あなたへのおすすめ”に上がる率が増えてきたので、良い機会だと思い、
1日1エピソードで感想でも書いてみようと思う。
第1回目は星新一「おーい、でてこーい」原作の『穴』である。
まったく、穴があったら入りたいよ。
https://www.youtube.com/watch?v=Vne6Zm7w7HA&t=2s
とある地方の建設業者のお話。
ゴミ処理のため、新たに廃棄物処理場を建設することになるが、地元の自治体の婦人会からの講義があったため、ため、事業計画の説明会を行うことに。
「異臭はどうするんだ」「そもそも周辺住民は賛成などしていない」非難轟々を投げかける婦人たちに対し、
建設会社の社長(いかりや長介)は、
「じゃあ、現実問題、あんらがたが日々で出すゴミはどうするんだ。人間がゴミ出さずに生きていける訳ねぇだろ」
と反論する。
グゥの音も出ずに閉口するほかない。
ある日、整地予定地だった空き地に併設されていた祠の底から、正体不明の「穴」が見つかる。
なんの目的で開けられたのか、深さも全くわからない穴。
「おーい、でてこーい」と呼びかけてみる社長。
案の定、なんの返答もなく、とりあえず缶を投げ入れてみるが、一向に地面に落ちた気配もない。
試しにロープを垂らし入れてみるが、400mほどいれたところで、ロープが足りなくなってしまった。
様子を見ていた子供が穴に近寄ったため、慌てて子供を抱えるが、拍子に子供が手にしていたサッカーボールがこぼれ落ち、穴の暗闇に吸い寄せられるように消えていった。
至急、穴の調査を部下である社員Aに命じる、いかりや社長。
調査の結果、穴の底には東京ドーム約500個分の空洞が広がっているらしいことがわかる。
周辺住民も「穴」の存在に気がついたらしく、噂の「穴」をひと目みるため、連日人だかりができていた。
ある晩、真夜中にも関わらず、社員Aの元にへいかりや社長から慌ただしく電話が入る。
「急いで来てほしい。俺、やっちまったよ、、、」
慌てて向かった先には、一人の男がぐったりと横たわっていて、その顔には見覚えがあった。
男の正体はフリーのジャーナリストで、いかりや社長はゴミ処理場の建設に際して、県庁の役人である人物との癒着をネタにしたゆすり被害に遭っていたのだ。
その晩もゆすりにやってきた男と口論になり、はずみで男を殺してしまったという。
社長の身を案じた社員Aは、「穴」に男の死体を遺棄してしまおうと提案する。
二人がかりで死体を穴まで運び、まんまと穴へ死体を放り込むことに成功し、安堵する。
人の気配がして、とっさに物陰に隠れる二人。
やってきたのは近所の主婦だった。周囲を伺いながら、家庭ごみを「穴」に放り込む瞬間を目撃してしてしまう。
このところ、穴が底なしだという評判が広まって、検察反対派の連中までもが夜な夜なこうしてゴミを捨てに来るというのだ。
事実、穴がゴミで溢れる様子もなく、この穴をビジネスチャンスにすれば良いのではと提案する社員A。
数年後、「穴」を利用した廃棄物処理事業が大当たりしたいかりや建設(仮称)は「ゴミの処理が迅速だ」という評判が一気に広まり、急成長を遂げていた。
それもそのはずで、分別や焼却の必要もなく、
ただ穴にゴミを放り込むだけなのだから。
図に乗ったいかりや社長は、さらに手広く県内全域の廃棄物を一手に引き受けようと悪知恵を巡らせる。
ところが、焼却炉の煙突から煙が一切上がる様子もないことを不審がった科学省の役人に目をつけられ、そのことを指摘されてしまう。
後ろめたさに動揺を隠せなかったが、科学省の役人は追求に来たのではなく、日本国内で出た廃棄物も引き受けていただけないかという交渉に来たのだった。
廃棄当日、トラックで運びこまれる廃棄物。
風でめくれ上がった布の隙間からは「放射性物質」の文字。
「大丈夫なんですか?こんなもの捨てちゃって」
「国が安全を保証してるんだ。間違いはないだろう」
「これで一気に事業の拡大が図れる」と社長の目に最早迷いはなかった。
さらに数年の年月が経過し、いかりや総業は巨大企業へと成長していた。新社屋を建設し、その竣工式には内務省の長官が出席するという。
建設に反対していた地域住民には、周辺のパイプラインを整備してやることで反対意見を黙殺していた。
まさに順風満帆の状況に、まんざらでもないといった様子のいかりや社長。片腕の社員Aに新社屋の屋上に登ってみないかと提案する。
東京の街並みを一望する二人。
「日本人が一年で出すゴミの量は3億トンだそうだ」
とつぶやきながら、東京の街を綺麗だと述べる。
「あの穴のおかげで、日本中が清潔になった気がしますよ」
やったなとばかりに笑い合う二人。
そのとき、ふいにどこからか声が響く。
「おーい、でてこーい」
辺りを見回すが声の主は分からない。
声の後を追うように、空から空き缶が降ってくる。
続いてロープが。更に続いてサッカーボールが。
ようやく自分たちに何が起きているのか察した二人だが、時すでに遅く、
東京の空には不穏に蠢く、黒く巨大な穴がぽっかりと口を開けていたのだった。
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いつかどこかでやったことのツケを払うときがやってくる、という因果応報を環境問題にもなぞらえて描いた秀作ですね。
世界はどこかで繋がっている。一箇所の問題が解決とて、その被害がまたどこか別の場所で起こらないとこ限らないし、作品のラストで描かれるように、もっと最悪な状況になるかもしれない。
安易な解決法があれば、それに疑問なく飛びついてしまうのではないか、という人間の持つ怖さ、
ゾーッとしますね。