極私的偏愛映画 ⑫『ベイビー・ドライバー』音楽とアクションの音ハメが心地よい、”聴く映画”の金字塔。

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ショーン・オブ・ザ・デッド』と、『ホット・ファズ
グラインド・ハウス』のオマケなど、テンポよい編集に、イカした音楽オフビートな笑いと、筆者的にはビンビンに好みのポイントを突いてくる、エドガーライトだったが、今作は氏の集大成とも呼ぶべき大傑作。

 

以前、FBに記載した内容の加筆、修正版になります。

 

 

 

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常にイヤホンでお気に入りのプレイリストを聴いて幼少期の事故の後遺症である耳鳴りを誤魔化し、寡黙に自分の世界に閉じこもりがちだが、一度ハンドルを握らせれば、人並み外れたドライビングテクを発揮する青年"ベイビー"

 裏で暗躍させれば、右に出る者無しなケビン・スペイシー演じる裏社会の顔役、"ドク"に見入られ、犯罪現場から犯人を逃走させる逃し屋としての毎日を送るベイビーだったが、ある日、行きつけのダイナーのウェイトレス、デボラと運命的な恋に落ちてしまう。

デボラとの出会いから、裏社会から足を洗う事を決意するベイビーだったが、類い稀な運転技術を持つ彼をドクがやすやすと手放すわけもなく、再びヤクザ稼業に駆り出されるハメとなる。

 

というのが、今作の大まかなあらすじ。

監督のお気に入りの楽曲リストで埋め尽くされた本作は、タランティーノ映画や、最近であれば選曲センスやオフビートな作風で好評を博したジェームズ・ガンの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に近い、ジュークボックス的な楽しさに溢れた仕上がりになっている。

 

特に、ジョン・スペンサーベルボトムをバックにアトランタを縦横無尽に走り回るオープニング

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タイトルクレジットからのボブ&アールの『ハーレム・シャッフル』

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とある一触即発の場面でかかるチャンプス『テキーラ』のリミックスverと映像の音ハメ演出など、観ているだけでステップを踏みたくなるシーンが盛りだくさん。

 

巷では、流行りに乗っかり『アクション版ララランド』などという冠が付いて回っているらしいが、あれは大衆的な見世物ミュージカルを、映像に落とし込んだ類の作品だが、

対して『ベイビードライバー』は一貫して、イヤホンという閉鎖的(クローズド)な愉しみを観客のみが共有できるという、他人の脳内を覗き込むような、ある種の共犯関係に似た関係性を共有する楽しさに満ちている。

 

近年は予告編だけ使われる楽曲が、実際、劇中では全く流れず、予告編と本編、鑑賞前と鑑賞後の印象の差が付きすぎて物議を醸すプロモが目立つ中、予告編と極端な差をつけず、キチンと観客の期待に応える作りになっている点は評価したい。

 

お話といえば、決して明るいものではなく、数あるエドガー・ライト作品の中でも最も陰鬱。

ポップな印象に反して、ベイビーが理想の代理母を手に入れるまでに、善き父親の手を借りて、邪悪な父親を打ち倒すという、かなりフロイト的な内容だったのには驚いたが、

シビれる車最高の音楽とびきりのバイオレンスで最高の映画が作れるという事を改めて証明してくれた。

そうした意味でも、かなりの筆者ホイホイな出来栄えとなっており、是非爆音上映でもう一度観たい、そんな作品。