マンガレビュー『はるかなる甲子園-駆けろ!大空』という傑作野球(?)マンガについて語らせてくれないか【前編】
コンニチハコンバンハオヤスミ。
ドウモ。ガラ空きです。
突然ですが、みなさんは”野球漫画”と聞いて、どんな作品を思い浮かべるでしょうか。
メジャーどころでは『タッチ』だったり『ドカベン』だったり、
とにかく現代に至るまでの作品を挙げ出すと、枚挙にいとまがないかと思います。
私は運動神経が悪いという理由も相まって、あまりスポーツというものに馴染みがなく、せいぜい通いで習った剣道くらいのものだったので、むしろ体育の野球やサッカーの授業は嫌悪したほどです。
そんな私でも全話完走するくらいにまでハマった野球漫画がありまして、
それが
『はるかなる甲子園-駆けろ!大空』
という作品です。
1996年から1998年のおよそ2年間に渡り『月刊コロコロコミック』内で連載され、
全18話、コミックスにして3巻分の作品となります。
物語の大きな展開として、
1巻
- 大空登場 チーム結成
- 対・聖エルモ学園①(マフィア編)
2巻
3巻
という流れになっています。
Amazonでも当時のてんとう虫コミックスが販売されていますが、
個人的にオススメするのは以下のリンク。マンガ図書館Zというページで、
全話無料で読めますので、ぜひ読んでみてください。
スポーツ嫌いなので、未だに野球の大まかなルールさえ分かっていないのですが、にも関わらず、なぜこの『駆け空』が好きかというというと、
まず全3巻という、圧倒的に読みすいボリューム感。
そして、野球以外の部分がバカ面白すぎて、ルールとか細かいことがあまり頭に入ってこないというシリアスな笑いがこのマンガ最大の魅了だからです。
後から知ったことですが、野球のことはよく知らない状態で連載をスタートせざるを得ず、ゆえに野球の醍醐味だったり、試合に勝利するための努力だのテクニックだのは、
犬に食わせておけ
と言わんばかりの”往年の熱血路線”と”シリアスと笑いのギリギリのライン”を武器に破竹の勢いで突き進む推進力が、このマンガにおける野球の定義だと思ってください。
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1巻(1話〜6話)チーム結成に至るまでの軌跡
物語の舞台は市立博愛学園高等学校。
かつては強豪野球部で鳴らした名門でしたが、
「自由を尊び、全ての束縛から開放する」をモットーにしすぎた結果がこのザマ。
手のつけられなくなった無法者(生徒)によって校内は完全に世紀末の様相を呈しています。
そんなある日、一人の男が博愛高校に現れます。
最初は生徒たちからホームレスと勘違いされますが、
この男こそ、今作の主人公である「 静 大空(しずか おおぞら)」その人。
元・博愛高校野球部のエースだった大空ですが、再び博愛高校に希望の灯りを灯すため、教師となって母校に舞い戻ったのです。
着任早々に生徒たちとのスキンシップから取り掛かる大空。
※野球漫画です。
当然のごとく、荒くれた生徒たちから手荒い歓迎を受けますが、
その中のひとり、元・野球部にして暴走チーム魔鬼雨(まきう)のリーダー、山彦アキラと出会う。
大空は、山彦のピッチャーとしての強肩に目をつけ、野球部再建のために不良軍団で野球チームを結成することを決めます。
やがて大空は山彦に「ミラクル」というあだ名をつけ、『あしたのジョー』における矢吹丈と丹下段平に近い、コーチと選手という信頼関係を育み、物語を牽引していくに至ります。
「お、おめぇ、ちょっとその腕見せてみな!」
ストーリィ的には『スクール・ウォーズ』や『GTO』、『ルーキーズ』といった、
「不良生徒たちと型破りな教師が出会い、次第に心を通わせていく過程で一つの目標に突き進む or 不良が徐々に更生するお話」という王道に則ったストーリィなのですが、
個人的には、この作品の作者であるかとうひろし先生がオンタイムでご覧になったであろう作品を想像すると、『駆けろ大空』の根底にあるリスペクト精神は、
かの『アパッチ野球軍』に注がれているのではないかと感じてしまいます。
仮にも生徒に「ダニ」だの「材木」「ハッパ(ダイナマイトの意)」「網走(父親が服役中だったから)」などというコンプライアンスに問題のありすぎるあだ名をつけたり、主人公である堂島先生が肩を負傷し、選手生命を絶たれた投手という設定など、
根本的な基本設定に関しては、『アパッチ〜』から拝借していること、
問題のある生徒との交流を描くことをメインとするため、バックボーンを描くために野球の描写がかなりおざなりになってしまう分、それ以外の部分がバカみたいに面白いという点も、『駆けろ〜』との類似点を感じざるを得ません。
同時代に、犯罪者集団で組織された警察特殊部隊の活躍を描いた『ワイルド7』などがありますが、キャラのアクの強さでは『駆けろ〜』も引けを取っていないかと。
大空の教育的指導(物理)によって、何かを感じ取ったのか、元・野球部員の名簿を記載したメモを渡すミラクル。
「とんでもねぇやつら」←ここ重要
さも当然のように校内の廊下をバイクで颯爽と走り去りますが、もはやそれに対して誰もさしたるツッコミすら入れません。
「ハッハッハ」じゃねぇのよ
ここで今作の身内のダニ枠として登場する教頭ことクソヤギ先生がエントリー。
大空をやたらと目の敵にすることで野球部の行く手を阻んできますが、その策謀によって、3日間のうちにチームを結成できなければ即クビという無理難題をふっかけられます。
約束の時間が迫り、あわや大空はクビかと思われたその瞬間、
ここ、最高。
野球部の復活の為に侮辱をもろともしない大空の姿に未来を賭けてみようと、再集結したのです。
どうにかメンバーの確保に成功した大空でしたが、チームは揃いも揃ってくせ者ばかり。
チームリーダーのミラクルをはじめとする、感激体質のカンドウ、ひねりの無いあだ名No.1のガクシャ、足が速いだけが取り柄のダンガン(酷い)、見た目が女っぽいのでレディー、博愛学園最高のお笑い担当ナニワ、もう見た目からしてアレすぎるマフィア、
大所帯に一人は組み込む法律でもあるのかデブ担当ニクマン。
大空の元に集った、「いずれも少年院入り直前の、恐竜達だ・・・ッッ」
ところが早速トラブル発生。チームメンバーのネズミが居ない。
どうやら家庭の事情で練習には参加出来ないのだという。
大空はネズミの止まれぬ事情を察知し、ネズミが野球に打ち込めるよう、
便宜を図ろうとするが、
すっかり負け犬根性が染み付いてしまっていたり、過去に暗い記憶を背負っているメンバーによって構成されているチーム故、こうした人間更正シーケンスが毎試合毎に挟まれます。
どうにかネズミの家庭の問題も解消し、いよいよ博愛高校の記念すべき第一試合。
が、クソヤギ校長の策略により、大空達の意向ガン無視で勝手に対戦相手を決められてしまう。
対戦高校は聖エルモ学園。
鉄条網が張り巡らされた監獄のような外観。
すかさずガクシャが「暴力が支配するスラム学園と化している」と補足。
荒み過ぎだろ、この日本。
すっかり縮み上がってしまった博愛高校のメンバー達。
さっきまでの威勢はどこに行ってしまったのか、、、
只一人、マフィアだけが何か分けありげな様子だが、それもそのはずで、
マフィアは元々、聖エルモ学園からの転入生だったのだ。
で、何をやっていたのかというと、
バイクを乗りまわし、抗争に明け暮れていたという。
※野球漫画です。
一見穏やかに始まったかに見えた試合だったが、
徐々に、野獣の本性を明らかにしてゆく。
ラフプレーとかいう問題か?
「バキ」「ガシィィ」といった、およそ野球漫画に似つかわしくない効果音が画面を彩る。
さしものマフィアも「こいつはひでぇ」とドン引き。
「ニクマン・・・お前・・・」
「コンラッドじゃねぇか」
かつて暴走族時代に行ったバイクチキンレースの事故で親友を失ったマフィアの過去が徐々に明かされ、果たせなかった親友との約束の為に野球の世界に飛び込んだ事を明かすマフィア。
当時の後輩であるエルモ学園からは「裏切り者」と揶揄され、逆恨みされていたのだ。
相手チームの監督は「奴らの選手生命をここで断て」という指示が飛ぶ。
作戦とかいう次元ではなく、ただの外道オブ外道。
しかし、マフィアの不屈の闘志と正々堂々としたスポーツマンシップに感化され、
やがて相手チームは監督からの指示に対して不服従の意思を示し、あわや全員が病院送り寸前というところで、どうにかミラクル、マフィアたちの活躍によって初白星を挙げる。
とまぁ、ここまでが単行本1巻までの内容となります。
2巻以降は『駆け空』界のレジェンド、バード学園の登場により、物語の滑稽具合がインフレ化します。
また、
「だいぶきたえこんでいるようだなナニワ・・・」
「へへ・・今日は蒸しまっせ・・」
「ダンガン、アシハヤイダケ」
「俺は内角高めが苦手なんだ!(明言)」
等の名言、迷シーンのオンパレードとなりますので、
長くなる為、続きは後半にて。
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後半です。