感想『ピーターラビット』仁義無き戦い feat ホームアローン ~ IN イギリス湖水地方~
twitter上では「ウサギの皮を被ったヤクザ映画」と評判高い今作。気になりすぎて夜も眠れず「ピーターラビット_暴力」と検索する毎日。
えいやと友人数名と共に新宿ピカデリーにて鑑賞。
『ピーターラビット』と聞いてどんな作品を思い浮かべるだろう?
僕の場合はなぜかウェッジウッドのお皿が真っ先に浮かんでしまうんですが、
大抵の場合、可愛らしい絵本ですよね。
その実写化ときたら、当然可愛らしいテイストを予想するじゃないですか普通。
まぁ、まずは今年の1月18日に初公開された特報映像を観てくださいよ。
絵本原作のホワホワした要素を感じられる素敵な予告!
続いて、同年の4月19日に公開されたクリップをご覧下さい。
……は?
いや、その顔はアカンやろ。
ストーリーはいたって単純明快。追う側と追われる側。
殺るか殺られるか。暴力に次ぐ暴力。
※画像はイメージではありません※
いや、冗談とかじゃないですからね。
原作『ピーターラビット』でどうしてこうもヴァイオレントな魅力にまみれた映画が出来上がったのでしょう。
下記はThe Riverが行った、監督のウィル・グラッグの独占インタビューからの抜粋。
「実は戦争映画『プライベート・ライアン』(1998)の戦闘シーンを参考にしたんです。爆発も全てCGではなく、実際に火薬を使った特撮で頑張ったんですよ」
かわゆいウサギちゃんが登場する映画で「『プライベート・ライアン』(1998)の戦闘シーンを参考にしたんです」とか、普通ありえないでしょう。
今作では血がドバドバ出るとか、首が360°回転しながら爆発するとか、そういう類の暴力描写ではありませんが、限りなく『ホーム・アローン』に近い、悪意の無さ故に、逆に凶悪さが際立つヴァイオレンス。
基本的には畑を荒らし回るピーターラビットとその兄弟たちVS恋敵(?)であるマグレガーさんとのガチンコバトルがメインとなっているのですが、
攻撃の仕方が、ひっかきとかオシッコとかならまだ可愛げもあるところを、
やれドアノブに通電させて電気ショックで相手を吹っ飛ばすだの、寝起きの枕元にトラバサミを仕掛けて階段に設置したラジオフライヤー(赤いワゴンのオモチャ)で真っ逆さまに突き落とすなど、
「おめーガチで命(タマ)取りに来てんだろ」
とすら思えるシーンのオンパレード。
もはや原作では”ボタンを閉めてあげているお母さん”の絵すら、
「分かってんだよ。いいから出せや」
的な絵に見えてしまうマジック。
面白可笑しく書き立ててはおりますが、
今作の「可愛い×ウルトラ暴力」にこそ最大の不満というか、イマイチ乗りづらかった問題点を感じてしまいました。
トラップをしかける段階から、じっくりネットリと時間をかけた後に責め上げていた『ホーム・アローン』の天丼な暴力ギャグに対して、『ピーターラビット』におけるヴァイオレンスって、高速で通りすぎる通り魔的な暴力なので、笑う前にまず「ヒエッ」という感情が先立ってしまって、以外と笑えないというか、
ネタを味わう前に、オチの先にあるマグレガーさんの反撃のシーケンスに移ってしまうので、「スクリーン上の他人が不幸に遭う」状態を笑う余裕がないのです。
それは各カットの尺やつなぎ方もあると思うのですが、
単純に被害者たるマグレガーさんのリアクションや表情に対する寄り画が少なすぎるかなぁ、と率直に思いました。
マグレガーを演じるドナルド・グレーソンを主演に持ってきたあたり、
「まともな人なのか、ちょっとサイコ入ってるか、一見分からない」という印象があった役者なので、凄く今作にはピッタリだとは思ったんですが、
こういう表情ができる人なんだから、もっと顔芸中心で責めるとか、安心して笑えて、思い切りバイオレントな映画を志向して欲しかったなぁ、という贅沢な思いが湧き出てしまう映画でした。
顔芸で思い出しましたけど、
この「は?」みたいな顔は超好き。