極私的偏愛映画⑧『未来忍者 慶雲機忍外伝』アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?
両親どっちのセンスか分かりませんが、気がついたら家にあって、
それこそテープが擦り切れる勢いで観まくった『未来忍者 慶雲機忍外伝』をご紹介。
雨宮慶太 初期作品では『ゼイラム』『仮面ライダーZO』より好きな一本です。
1988年12月2日、『未来忍者 慶雲機忍外伝』のタイトルでポニーキャニオンより発売されたオリジナルビデオ映画。
サイボーグ忍者『機忍』を率いる黒鷺軍機甲師団と、劣勢に立たされた諏訪部軍、及びそれに協力する黒鷺軍からの抜け忍「白怒火」の戦いを描く。
源平討魔伝のPV制作でナムコとのつながりがあった雨宮慶太が、このゲームの企画書にあった木造高層建築に立つ忍者のビジュアルに興味を示し、初映画監督も務めることになり制作された。
また、ゲームの開発遅延により、ビデオの方が先行して発売になっている。
『東京国際ファンタスティック映画祭』出品作。
シン・ゴジラなどの原型製作で有名な竹谷隆之が、無名時代に着ぐるみやプロップ製作に関わっており、低予算作品ながら一見の価値あり。
竹谷はその後、「雨宮さんが忍者だったら俺なら」と造形作品を用いて未来漁師こと『漁師の角度』という作品を発表している。 (非公式wikiより)
とかくこの作品、低予算ながらも「和」と「サイバーパンク」を掛け合わせたような気の狂った世界観とデザインが抜きん出て素晴らしく、和装に身を包みながらもレーザービームが飛び交う合戦上を日本刀一本で駆けぬける勇姿には、まさしく藤岡弘、氏の提唱する”武士道”の姿を見た気がしたが、そんなことは無かったぜ!
本編も約70分と短尺ゆえテンポ良く進むので、ストレスフリーでツラツラ観れるのでオススメだ。
物語も単純明快。
元・凄腕の剣客だった飛勇鶴(ひゆうかく)は敵の手に落ち改造手術を施され、サイボーグ忍者(機忍)、”白怒火”(しらぬい)として生まれ変わった。
白怒火は己を取り戻し抜け忍となるが、さらわれた姫君の救出のためにやって来た討伐軍の中に、自らの愛刀を「兄の形見」と称し、剣を振るうかつての愛弟、次郎丸の姿を見る…
白怒火は一時、自らの素性を欺き、討伐軍と手を組んで敵の本拠地への潜入を試みるも、機忍を憎む次郎丸からは、敵意の視線を浴びせられてしまう。
本拠地の中枢に進むにつれ戦いは激しさを増す。より強力な武将機忍が現れ、
一人、また一人と命を落としてゆく中、ついに白怒火は宿敵、雷鳴法師の眼前に立つのであった…
物語に反比例して、デザインセンスは思わず笑ってしまうものから、秀でて魅力的なものまで、幅広い範囲で魅了してくれる。
神社ウォーカー。
お城砲。
実質、今回の敵側の主演といっていい、機忍”橡伎(しょうき)”佇まいや雨宮慶太氏のデザインセンスが爆発しまくった結果、中ボスのはずがラスボス以上の貫禄を漂わせる結果に。
地味にいい仕事をしている配下の機忍”稲荷(イナリ)”を含む、機忍大隊の面々。
シルエットで分かりにくいが、当時の雑誌をスキャンしてくれている人を見つけた。ありがてぇヾ
後年経って物語を振りかってみると、
ヒーローの出自が、敵組織に由来しており、改造手術を受け特殊能力を手にした主人公が、正義の心に目覚め、悪の組織を壊滅させるために、戦いへと繰り出して行く。
というプロットは、『仮面ライダー』とほぼ一致する。
後年、『仮面ライダーZO』によって、実際に『仮面ライダー』を手がけることになる雨宮慶太氏のキャリアを考えると、大変興味深い。
雨宮慶太氏は、シナリオの妙というより、圧倒的なデザインセンスを武器とし、それらを支える、腕利き特撮スタッフによる精密なディテール。手持ちカメラや固定撮影、クレーン撮影を的確な要領で使い分ける映像ディレクター的な素質といった能力に長け、非常に職人的な素養の中に個性を発揮するタイプであるので、今作『未来忍者 慶雲機忍外伝』は、氏のエンタメとしてのバランス感覚が奇跡的に監督一作目で発露した、貴重な作品である。