感想『ダウンレンジ』北村龍平3年ぶりカムバック!相変わらずの知能指数に安心の僕ニッコリ
職場の先輩から「北村龍平の新作やるってよ」と聞かされ、
「それ、ヤベーやつじゃないスか」と楽しみにしていた『ダウンレンジ』。
『プーと大人になった僕』を差し置いて、足早に新宿武蔵野館へ。
北村龍平といえば、特撮界隈では『ゴジラ FINAL WARS』だろうし、
糞映画に餓えた猛獣共にとってみれば、実写版『ルパン三世』、
コアな映画ファンにとってみれば、『ヒート・アフター・ダーク』
『VERSUS -ヴァーサス』、『Jam Films「the messenger -弔いは夜の果てで』
『 ALIVE -アライブ』『あずみ』『荒神』 『スカイハイ 劇場版』『LONGINUS』
とかだろうか。
氏の作る作品は、お世辞にも”頭の良い映画”とは言い難い。
僕が一番好きな『VERSUS -ヴァーサス』にしたってそうだ。
人物造詣は少年誌のバトルマンガみたいだし、どう取り繕ったって成人した大人の男性が観る類の映画ではない。
残るのは坂口拓のムサさとカッコよさくらいなものである。
でも、それでいい。
龍平映画からエスプリを得ようなど、無駄な試みなのである。
アクションにバイオレンス、気取った台詞にバイオレンスの上乗せ!
永遠の中二病発症者として我々、ひねくれ映画ファンにツッコミどころと「?」という感覚をもたらしてくれるのが北村イズムなのである。
さて、今作『ダウンレンジ』は実写版『ルパン三世』から3年ぶりとなった待望の新作である。
久々の復帰作品でありながら、舞台をアメリカに移し、当然ながら出演者も全員外国人。かつ、今作はかなりの低予算インディペンデント映画として製作されており、「限定された空間」を活かしたソリッドシチュエーションスリラーとなっています。
元々、アメリカ映画を製作していた時期もある北村龍平にとってみれば、
「原典回帰」的な映画となったのではないでしょうか。
突如、若者6人を乗せたバンが謎のスナイパーの標的となり、訳もわからないまま、
一歩も身動きの取れない状況に追い込まれ、次々と仲間がスナイパーのえじきとなってしまう。
という、ストーリーはいたって単純明快。
ゆえに映像のケレンや残酷描写がありったけ詰め込まれており、そのクドさときたら、まさにシッチェス級。※
とはいえゴア描写が悪趣味になる手前で物語の説得力に転化するギリギリのグロサ、といった調度いい塩梅。
役者が日本人ではないこともあり、日本人が演じていたら「ダサい」と思えるような台詞やシーンも特に違和感無く、
劇中、終始”死体蹴り”といった様相で、若干の作り物っぽさもありつつ、
洋物のホラーというよりは、どこか「日本の特撮もの」のような後味があります。
元々、どこか洋画を志向しているような資質を持っている監督ですから、
今回はそうした意味では成功だったのではないでしょうか。
どことなく80年代のスラッシャー映画を意識したような作りでありながらも、
現代の映画として絶妙なバランスを保ちながら、手堅く作られた一作でした。
物足りなさを挙げるとすれば、事件の犯人である”スナイパー”にもう少し味付けが欲しかったところですね。
特に犯行に及んだ経緯は明かされず、台詞こそ無いので、かなり攻めた演出ですが、
反面、悪役としてのカリスマ性に欠け、やや存在感がぼやけていた気がします。
ポスターも含め、このビジュアルはなかなか良かった。
あとは、とにかく登場人物がだんだんとヤケくそ気味になっていって、序盤に感じられた計画性や犯人の裏をかく知能戦の要素が少なくなっていった点ですかね。
フル装備で「ウォオオーーーッ!」と突撃しだす奴も出てきてしまう始末なんで、流石に劇場で笑いをこらえ切れなかった。