極私的偏愛映画 ⑮『スペース・ボール』米コメディの巨人、メル・ブルックス作のスクリューボール・コメディの大傑作

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映画好きを自負しているので、「好きな監督は?」と度々聞かれては、必ず答えるようにしている名前がふたつある。

 

ひとつは「シルヴェスター・スタローン

もうひとつは「メル・ブルックス」だ。

 

というわけで、元ネタ『スター・ウォーズ』より断然こっちが好き!

『スペース・ボール』をご紹介。

 

「全世界待望のシリーズ1作目にして完結編!」とはよく言ったものだと感心する。

 

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ワープした昔、遥か銀河系の彼方。悪しきスペースボール星のスクルーブ大統領は、薄くなってしまった星の大気を補充するため、近隣のドルイデア星から大気を奪取することを画策する。そして、ドルイデア星のローランド王の娘であるヴェスパ姫を誘拐し、姫の身柄を人質にして大気を盗み取ろうとする。

困り果てたローランド王は、流れ者の船長ローン・スターとその友人バーフに娘および愛車の救出を依頼する。かくしてローン・スターと姫たちは、スペースボール星人の執拗な追跡を何とかかわし続けていく。

 

 

お話はぶっちゃけ、スター・ウォーズ』ほぼままといっても差し支えない。

 

突拍子の無い、しょーもないお下品ネタの応酬ナンセンスギャグのオンパレードイカレポンチ揃いの魅力的なキャラクター

 

正直、ここまで”しょーもな感”を極めた作品も早々ないと思うのだが、

立ち返ってみれば、つまらなかったのかと聞かれれば、決してそうではない。

 

むしろ、後年時間を経るほどこの映画の”陽なる引力”とも言うべきか。

太陽に吸い寄せられるような魅力にグイグイと引き込まれてしまうのである。

 

メル・ブルックスの笑いは、一貫してコメディとしては至極真っ当な正攻法で貫かれている。

 

例えば、メルの敬愛するヒッチコックの『鳥』を模倣したワンシーンでは、

オリジナルに敬意を評し、飛翔し人間に襲いかかる鳥たちの恐怖を、映像的に反復しながらも、数十羽分からなるウンチの爆撃攻撃を浴びてしまうと言う、当然と言えば当然の結果として起こりうる事象を、

期待を裏切らずに描いてくれるのが心地よい。

 

メル・ブルックスの笑いと言うのは、いかに観客の期待を裏切り、応えるかと言うサービス精神に富んでいる。だからどんなに結果の読めるネタでも笑ってしまうし、

それはオチがわかりきったしょーもないネタ群だからこそというのもあるだろう。

 

生粋のエンターテイナーだと、個人的には思う。

 

今作『スペース・ボール』は原典である『スター・ウォーズ』の物語のうねり構造をそのまま引き継いでいるのだが、主人公をルーク的なポジションの若者ではなく、ハン・ソロのバッタモンである、ローン・スターという宇宙を彷徨う荒くれのアウトローと、人間と犬の間の子のようなパートナー、バーフという一人と一匹のバディものすることで、ウジウジとした青年の成長譚を大胆に省略した恩恵により、安定したコメディとして観ることができる。

 

レイア姫にあたるキャラのヴェスパ姫も、当時から別段美人だと思ったことはないが、終始ドレスの肩紐がはだけているのはとてもエッチだと感じていたし、

何よりコメディに振り切った全力体当たりな感じは非常に好印象だ。

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(かんかん照りの砂漠で皆が水を求める最中、ヴェスパ姫はひたすら「ルームサービスを読んで頂戴」と朦朧と喘ぐシーンでは、顔はブスだが体は最高にスケベなクラスの女子に内なる”女”を感じてしまい、思わず勃起してしまう感覚を思い出して最高にエッチと自分の中では好評を博している)

 

C3POにあたる侍女ドロイドのマトリクスは、性別(ロボットだけど)が喧しいザマスキャラ属性が追加されて、元ネタのC3POの10倍はウザくなっているのだが、

自己中心的なローンスタートヴェスパ姫というコンビの合わさった際には、同じく中和剤要因のバーフ共にパーティの中では中立という絶妙な立ち位置を保ち続けている。

 

なにはもとより、今作を大きく牽引するのは、

ダース・ベイダーこと”ダーク・ヘルメット卿”を演じる、ニック・モラリスの存在だろう。

 

 

チビでブサイクで丸黒縁メガネで童貞という、

この世の俺らの全てををそこに置いてきた」G・ロジャーばりの地獄の責め苦を背負わされたような風貌、というか俺らそのものなのだが。

 

ハリウッド版、野田秀樹みたいな風貌ですが、

ゴーストバスターズ』では実際に野田秀樹が吹き替えを担当していたりします。

(モラリスの吹き替えは富山敬版が好き)

 

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今作のモラリスは所謂”陽キャ主体の映画で割りを食う陰キャ”というステロタイプの垣根を超えて、もはや主役であるローン・スターを完全に食っている。光り輝く我らが希望の星である。

 

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頭部に対して異様なまでに肥大したそのヘルメットは、一体なんの意味があるのか

という疑問がまず沸き起こるのだが、ある出来事の末にそれすらも「いやぁ、このヘルメットがなかったら即死だったよ」とシャア・アズナブルばりのいなす余裕。

 

おそらく側近の部下の方が優秀な指揮官であることは観客の目にも明らかなのだが、

この男が、次にどんな判断ミスをするのか、今や今やと画面から目が離せなくなってしまう圧倒的なカリスマ力

 

ダーク・ヘルメットこそ、SF映画界のナンバーワンを主張する声に異論はなく、

とある調査の結果では、ダーク・ヘルメットこそ、ジョージ・ルーカスの目指したアナキン・スカイウォーカーにより近い理想形とし、

原点であるダース・ベイダーの支持率20% を上回る、200%の支持率という圧倒的な実力差を見せつけたというのは、有名な話であるが、

 

個人的に最も好きなダーク・ヘルメットの名シーンは、

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どんなに頑張ってもローン・スターに先を越されてしまうのを悔しんで、

自室にこもりきり、自作のフィギュアを使ってロンスタを打倒

 

ついに手に入れたヴェスパ姫を持ち前の性技で骨抜きにし、おセックスに持ち込んでいるところで突然部下にノックなしで部屋凸され、

思わず「見たか!?」と聞いてしまうダーク・ヘルメットに対して、

「いえ!お人形遊びは見てません!」と答える部下に

「そうか!よかった!」と返すシーンです。

 

 

 

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ダークヘルメット様のデザート(砂漠)仕様。 馬鹿じゃねーの?(褒めてる)

 

その後も、あれよあれよとダーヘル率いる追っ手(バカども)の追随をかわしながらも、

どうにかダークヘルメットに対抗する為の未知のパワー、”シュワルツ”の真理にたどり着く一行。ついにダークヘルメットとの一騎討ちに臨む。

 

細かい経緯や説明は省きますが、

 

まぁ、以下の画像で察してください。

 

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「お前の股間のシュワルツと私のシュワルツ。どちらが立派か、もっと良く見せ合おうではないか」的な事を言っていますが、この映画で最もエキサイトするところです。

 

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う〜〜〜ん、つって。繰り返しになりますが、この映画で最もアツいところです。

 

 

細かい解説をすればするほど、いかにしょーもないネタで構成されているかが身に染みてしまうのですが、一旦見始めると何時間でも見ていたくなる、不思議な魅力に満ちた傑作です。

 

僕はVHSでは飽き足らず、DVDとブルーレイ、計3本のソフトを有する、生粋のスペースボーラーですが、

それもこれも、やはり陰キャを地で行って、フルスイング体当たりで笑いをかっさらっていくニック・モラリスに感銘を受けてしまうからなんですよね。

 

やはり短所を武器に変えて人々を楽しませるスキルというのは素直に尊敬しますし、

ダーク・ヘルメット卿はこれからも非モテの星として、燦然と輝き続けるのでしょう。