感想『九ちゃん刀を抜いて』沢庵ソングが頭から離れない。
たまには、旧作を観たいと思っていたところに
神保町シアターにて開催中の【迎春特番 踊る時代劇】特集を発見。
こいつは縁起が良さそうだ、と思い、
坂本九主演作『九ちゃん刀を抜いて』をチョイス。1963年、東映、岡本一平原作、城のぼる+吉川透脚色、マキノ雅弘監督作品。
神保町シアターはかなり久々だったけれど、相変わらず若者率が低くてホッとする。
はてさて、坂本九といえば筆者は『上を向いて歩こう』くらいしか知識がないのだが、
当時のアイドル的な人気は凄まじいものだったと聞く。
原作は岡本一平って、岡本太郎のお父さんじゃあないか。マンガ原作らしい浮かれた雰囲気の中、最低限の時代劇要素を散りばめながらも、作品としてのテンポはやや悪い印象。
愛嬌を振りまいたり、ヤクザめいた見栄を切ったりと、坂本九の達者ぶりは良く分かるのだが、コメディとしては今ひとつ天井を抜けた感のない、ウケを外れているようにも見えた。
当時としてはこれで十分だったのだろうが、流石に21世紀ともなるとハテ、武が悪い。
坂本九演じる、まるで駄目男が侠客として巣立ちし、やがて持ち前の人柄と愛嬌でもって次第にのし上がり、やがて1人の花魁を巡った武家と侠客一家の抗争にまで発展してくという筋書きも、冒頭のダメンズっぷりが物語のフックとして今ひとつ機能していない。
唯一、はちゃめちゃでタガの外れた笑いどころとしては、終盤に漬物屋をオープンする事になった坂本九と南田洋子夫妻とその他オーディエンスによる沢庵ミュージカルだろうか。
「沢庵で生きぬこう!」「ポリポリ、パリパリ♩」という歌詞に乗せて、不自然なくらい沢庵がバカ売れていく様はなかなか笑えたし、沢庵をドーナツのように紙に挟んで食べ歩きしている光景は異様すぎる。
原典は弘田三枝子の「アスパラで生き抜こう」のパロディだろうか?
ともあれ、ちょっと華やかなコントとしての出来はそこそこだったのだが、今更、批評もクソもないのだから、こういうのはおじさんおばさんが当時を懐かしむか、僕みたいな輩がふらっと立ち寄ってユルっと観るか、どっちかである。要は楽しんだもの勝ちなのだ。